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「問題点」も面白い衝撃アニメ映画 「オマージュ露骨すぎ」「んな訳あるか」

毎年多数公開されるアニメ映画のなかには、他のヒット作からの影響が見えながらも、失敗作または問題作と言わざる得ない作品もありました。意味が分からないほどに展開が錯綜していたり、さらにはツッコミどころが笑えたりする領域に到達した作品もあり、それはそれで忘れがたい異彩を放っています。

人気作からの影響そのものが悪いわけではない

映画『君は彼方』ポスタービジュアル (C)「君は彼方」製作委員会
映画『君は彼方』ポスタービジュアル (C)「君は彼方」製作委員会

 毎年多数公開されるアニメ映画のなかには、野心的な試みをした作品もたくさんあり、そのなかには有名作のオマージュを感じられるものの、要素がチグハグになったり、物語がツッコミどころ満載になったりしてしまったものもあります。

 もちろん、クリエイターが他の作品に影響を受けることが悪いわけではありません。たとえば、新海誠監督の『君の名は。』は映画『転校生』から、『すずめの戸締まり』は村上春樹の短編小説の『かえるくん、東京を救う』から大きな影響を受けています。大切なのは、影響を受けたとしてもオリジナリティーを大切にし、どのように作品に昇華して、整合性を持たせていくか、ということなのでしょう。

 ここでは、他の作品からの影響がありながらも、失敗作または問題作と言わざる得ないアニメ映画を3作品振り返ります。しかし、いずれも美点は十分にありますし、クリエイターの方にとっては反面教師になるかもしれない、見る価値のある内容だと言っておきます。

●『君は彼方』

 2021年に公開された『君は彼方』は原作のないオリジナル作品なのですが、その中身はもはや人気作の「パッチワーク」でした。『天気の子』のように雲の上に到着したり、『千と千尋の神隠し』のように海の上を電車で走ったり、『ペンギン・ハイウェイ』のようにたくさんのペンギンが空を飛んだりします。

 果ては『アナの雪の女王』を意識したと思われるミュージカルシーンの「入り」の部分の違和感も大きく、総じて「人気作をマネすればいいってもんじゃない」という確かな学びも得られるでしょう。

 劇場パンフレット掲載のインタビューにて、本作の瀬名快伸監督が『不思議の国のアリス』の影響に言及しつつも、「実は僕はあまり影響を受けないよう、ほとんど何も見ないようにしているんですよ。家にも机とソファーと観葉植物くらいしか置いてありません」と回答していることも衝撃的でした。

 詳細は伏せておきますが、中盤であるキャラクターが「どう見てもアイツ」に変身して大暴れをするシーンに至っては、言い訳が不可能なほどの明確な有名作のオマージュなので、そう言ってしまえる胆力が恐ろしくなります。

 中盤からスピリチュアルな要素も増えていき、「大神」という神的なキャラクターも登場するため、どこかの宗教団体の映画のような印象も持ってしまいましたが、クレジットにそれらしき名前はありませんでした。そういえば『君の名は。』にも巫女が登場するなど日本古来の伝統を土台に設定が構築されていましたが、対して『君は彼方』は「うさんくさい」という印象ばかりを持ってしまうことでしょう。

 さらに、終盤での時間が延々とループしているような「引き伸ばし感」のある展開や、主演の松本穂香さんの見事な「嗚咽(おえつ)の演技」が、もはやホラー映画の様相を呈しています。前述したように有名作で見たようなシーンが多く、オリジナリティーには乏しいはずなのに、あまりにカオスな内容であるため、一周回って「今までに見たことがない映画を見ている」という矛盾した感覚に襲われるのもまたホラーでした。

 しかしながら、序盤で感じた違和感がしっかり伏線として回収されたり、メインの「現実世界での人間関係や、努力から逃げ続けてしまっていた少女の成長物語」としてはちゃんとした過程と結末が用意されていたりと、素直に評価できるポイントもあります。

 何より、これほどツッコミどころ満載で「雨のなかを自転車で爆走して直角に曲がる」などの珍シーンを楽しめるアニメはなかなかないので、大勢で集まって観るか、ウォッチパーティーで鑑賞してみてはいかがでしょうか。

【画像】え…っ? 『君は彼方』で「まんま出てきた?」 こちらが「オマージュ?」された超有名キャラです

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