TV版『エヴァ』21話 突如描かれる「中年の恋」に唖然? 過去編のはずが謎は解けず
TVアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』をリルタイムに視聴していた人にとって、1996年2月から3月に放送された終盤の展開は驚きの連続でした。2月21日に放送された第弐拾壱話「ネルフ、誕生」では、主要人物たちのドロドロとした人間関係が明かされたものの、『エヴァ』にまつわる謎はますます深まり、さらなる活発な考察が行われることとなりました。
いよいよ謎が解けるのかと期待したが…?

今から29年前の2月21日、TVアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』(以下、TV版エヴァ)の第弐拾壱話「ネルフ、誕生」が放送されました。重苦しい物語展開が続くなかで、主人公の碇シンジら主要人物が所属する組織「ネルフ」の誕生にまつわる過去が次々に明かされましたが、『エヴァ』にまつわる謎は解決するどころかますます深まりました。また、登場人物の過去の姿が描写された反響も非常に大きく、リアルタイムで見ていたファンの間では議論や考察が加速しました。
当時、次回予告で「ネルフ、誕生」の文字を見た視聴者のなかには「いよいよエヴァにまつわる秘密が明かされるに違いない」と思い、身構えてTVの前に陣取っていた方もいたのではないでしょうか。
なにせ『エヴァ』はあと6話で完結するというタイミングでした。残る使徒はあと何体なのか。サルベージされた碇シンジはこの先どうなるのか。心身ともに傷ついた惣流・アスカ・ラングレーは何を思うのか。綾波レイとはいったい何者なのか。前話で明かされた加持リョウジと葛城ミサトの関係性はどうなるのか……多くの期待とともに、弐拾壱話は始まりました。
まず当時の視聴者を驚かせつつ「やっぱりな!」と思わせたのが、シンジの母親である碇ユイの声優が林原めぐみさんだったことでしょう。シンジに対して冷たい碇ゲンドウが、唯一親愛の情を見せる綾波レイと声優が同じだったことは、ファンの間で「綾波はシンジの母/ゲンドウの妻のクローンではないのか?」と囁かれていた説を強烈に補強したのです。
さらに、冬月副指令が元は大学教授だったこと、ゲンドウが元は「六分儀」姓だったこと、ユイが秘密結社「ゼーレ」とつながりがあるなど、新たな情報が次々に繰り出され、時間は瞬く間に過ぎていきました。
いったい誰が予想した? 中年女性の恋愛感情がむき出しに

セカンドインパクトの発生。葛城ミサト、加持リョウジ、赤木リツコの過去。碇ユイが実験中にシンジの目の前で消えた事件。
その後に現れた、ユイそっくりの小さな綾波レイなども多くの驚きを与えてくれましたが、何より斬新な描写だったのは、赤木リツコの母親にしてNERV本部のスーパーコンピュータ「MAGI(マギ)」を開発した赤木ナオコ博士が、ゲンドウに抱いていた恋愛感情でしょう。
密かにゲンドウを想っていたナオコは、ユイの消滅後は強引にキスをするなど、好意をむき出しにします。キス直前のシーンでリツコがこのとき23歳だったと明かされますが、これはナオコが40代以上であることを強調するための情報と思われます。
結局彼女の気持ちは通じることはなく、小さなレイの口から発せられたゲンドウの本音「ばあさんはしつこい ばあさんは用済み」にナオコは激怒してレイを絞め殺し、自身も投身自殺してしまうのでした。
そうした悲劇の後、ゲンドウは「人類補完計画」を立案し、設立された特務機関NERV(ネルフ)の総司令官に就任。冬月は副指令となりゲンドウの協力者となりました。
加持リョウジの姿は銃声とともに消え、ミサトは留守電を聞いて嗚咽(おえつ)し、シンジは何もできず布団を被り、アスカの姿は見えないまま第弐拾壱話は幕を閉じたのです。
幾ばくかの秘密が明かされたものの、謎はさらに増すばかり。確実にストーリーは終焉へと向かってはいたものの、TVの前でエンディング「FLY ME TO THE MOON」を聞いていた視聴者のなかには「あと5話で、エヴァは本当に完結するのか?」と考えていた方もいるでしょう。
この疑問に対する回答は、後に想像を超える形で視聴者たちの前に示されることとなるのです。
(仙乃葉白)