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人はどれ程ぶっ飛んだデザインまで「ガンダム」と認識できるか どこで限界突破した?

これまで多数の「ガンダム」が世に送り出されてきており、大抵はひと目で「ああガンダムだ」と認識できるものです。では人はどこまでを「ガンダム」と認識できるのか……そのラインにチャレンジしたのが『Gガン』と『∀』かもしれません。

デザインの限界を突破した『Gガンダム』と『∀ガンダム』

なぜこれを「ガンダム」と認識できるのか。「HGCC 1/144 WD-M01 ターンエーガンダム」(BANDAI SPIRITS) (C)創通・サンライズ
なぜこれを「ガンダム」と認識できるのか。「HGCC 1/144 WD-M01 ターンエーガンダム」(BANDAI SPIRITS) (C)創通・サンライズ

 最新作『機動戦士Gundam GQuuuuuuX(ジークアクス)』に至るまで、この45年あまりのあいだに無数ともいえる「ガンダム」が世に送り出されてきました。そのようななか、頭をもたげる疑問は「人はどこまでをガンダムと認識できるのか?」ということでしょう。

『機動武闘伝Gガンダム』に登場した、寺院の釣り鐘のような「マンダラガンダム」や、スーパーロボットのような『閃光のハサウェイ』の「Ξガンダム」もあれば、現代的でエッジな印象を与える「ジークアクス」まで、不思議なほどひと目見れば「ガンダムだ!」と分かってしまいます。

 初代『機動戦士ガンダム』の主役メカをガンダムたらしめる三要素は、「ツノ」(V字アンテナ)と「直線的なライン」、それに赤青黄の「トリコロール」だと言われてきました。

 が、デザインされた大河原邦夫さんは、「侍」をモチーフにしたと明言されています。ツノやフェイスマスクは鎧かぶと、角張った肩は和服の裃(かみしも)というわけです。初代ガンダムに先行した富野監督アニメ作品『無敵超人ザンボット3』や『無敵鋼人ダイターン3』も明らかに「侍」であり、その続きにあるのです。

 敵の「ザク」が「量産兵器」であり、戦争が繰り広げられるリアルな世界観のなかで、ただひとつ「侍」というヒーロー性を持つことが、初代「ガンダム」のデザインを際立たせていたのです。その意味で、ツノは多くのガンダムに受け継がれたのでしょう。

 ただし、残りふたつは事情が異なります。まず直線的なデザインは、当時のオモチャが子供の雑な扱いでも壊れないように頑丈さを優先、かつ直立不動できる設計にされたことと深く関係があったはずです。またトリコロールに関しては、富野監督はぜんぶ白にしたかったものの、オモチャにすると店頭でカラフルなほかの商品に負けてしまうから、との証言もあります。

 つまりオモチャとして商品化しなければ、べつに直線的にしたり、トリコロールにしたりする必要はありません。それは富野監督ご本人が手がけた小説版における、グレー一色の「G3ガンダム」の登場で裏付けられるでしょう。

 さらに『機動武闘伝Gガンダム』では国際競技大会というコンセプトや、「戦争」という概念が取り払われたこともあり、自由奔放なガンダムたちが誕生しました。その多くが、闘牛やら風車やらコブラやら大胆すぎるモチーフでありつつ、V字アンテナとフェイスマスクは共通しています。逆にいえば、「ガンダム顔」さえあればガンダムと認識できるということです。

 そうしたガンダム顔さえ取っ払い、認識の限界にチャレンジしたのが『∀ガンダム』です。メカデザインを映画『ブレードランナー』(1982年)などで知られるシド・ミード氏に依頼したところ、最初に作られたのがヘルメットのような頭で相撲の力士みたいなデザインでした。工業デザイナーであるミード氏は、18mで駆動するヒト型ロボットはこうなるという、真のリアルロボットを設計してしまいました。

 そこから制作サイドの要望を受けて再デザインされた「∀ガンダム」は、やはりヘルメット頭でした。何より口からひげが生えていて驚かれましたが、よく見ればV字アンテナの変形です。ボディもトリコロールに塗られ、どうにか従来のガンダム側に引き戻されたのでした。

 こうして振り返ると、『Gガンダム』と『∀ガンダム』で限界突破した結果、人類のガンダム認識能力は飛躍的に高まり(?)解き放たれたようです。「ツノかトリコロールがあればガンダム」は、1日にしてならず、ですね。

(多根清史)

【画像】ガンダムとは…こちらうっかり深淵が覗ける『Gガン』の変わり種ガンダムです(4枚)

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