昭和の衝撃「敗北」エンドの名作 「あと少しじゃん」「捨て身だったのに」
物語の主人公といえば、ラストで悪党を退治するイメージがありますが、昭和のマンガやアニメのなかにはラスボスに屈してしまう作品もありました。報われない結末のために多くの読者や視聴者を驚かせ、その後味の悪さから、いまだに語り草となっています。
あとちょっとだったのに

昭和のマンガやアニメを振り返ると、物語の主人公や主要キャラが、強敵やラスボスに負けて、かなりのバッドエンドを迎えた作品も少なくありません。
たとえば、1972年から「週刊少年サンデー」(小学館)で連載されたジョージ秋山先生のマンガ『ザ・ムーン』は、「全滅ラスト」で有名です。同作の主要キャラは9人の少年少女で、皆が心をひとつにすることで起動する巨大ロボット「ザ・ムーン」が悪党たちと戦います。
最終話では、宇宙からやってきた「ケンネル星人」が地球を滅ぼすために、動物や植物、人間を死に至らしめるカビを散布しました。それを食い止めるため、リーダーの「サンスウ」を筆頭に9人の少年少女が敵に隠されたザ・ムーンを探し当てたものの、カビ発生装置にたどり着きそうなところで、彼らはカビによって倒れてしまいます。
そして、ラストに動かなくなったザ・ムーンが「ムーン ムーン」と叫びながら涙を流し、物語は幕を閉じるのでした。「報われない正義を描いたトラウマラスト」「令和ではありえない最終話」などいまも伝説的な最後として語り継がれています。
また、アニメでは、1980年に放送が始まった『宇宙戦士バルディオス』も救いのないラストが描かれた作品です。同作では、皇帝殺しの濡れ衣を着せられた主人公「マリン・レイガン」が、放射能で汚染された星と地球の両者の狭間に立ちながら、合体ロボ「バルディオス」で地球侵略軍「アルデバロン軍」と戦います。
最終回では、アルデバロンが地球人抹殺作戦を開始しました。人工太陽を使って北極と南極の氷を溶かす作戦を実行したことで、全世界で大津波が発生します。そして、バルディオスは何もできず、都市が崩壊して人びとが死んでいく様子が映し出されるのです。
結果的に地球は水没し、30億人が犠牲となって物語は終わりを迎えます。さらに、同作の劇場版では、マリンたちが亜空間航行の際に誤ってタイムスリップし、「S-1星」とは遠い未来の地球そのものだったという設定が明らかになりました。
昭和末期の作品では、マンガ『ジョジョの奇妙な冒険』(作:荒木飛呂彦)の第1部「ファントムブラッド」(1986~87年連載)の主人公「ジョナサン・ジョースター(ジョジョ)」も、悪との戦いの末に命が絶えた主人公です。
第1部は19世紀末のイギリスが舞台で、ジョナサンの父「ジョージ・ジョースター卿」が恩人の息子「ディオ・ブランドー」を養子にするも、ディオは財産の横取りを計画し、紆余曲折を経て古代の「石仮面」の力で不死身の吸血鬼と化し、ジョナサンと対決しました。
ジョナサンは吸血鬼に効果がある、太陽と同じ波長の生命エネルギーを生み出す呼吸「波紋法」を会得し、多くの犠牲を払いながらもディオとの決戦に勝利します。しかし、不死身のディオは首だけの姿になりながらも生き延びて、ジョナサンの肉体を乗っ取ろうと再び彼の目の前に現れました。
「エリナ」との新婚旅行中だったジョナサンはアメリカ行きの船に乗っており、突如のディオとの戦いで致命傷を負います。その後、苦肉の策でジョナサンがエリナを逃がして船ごと自爆したものの、第3部ではディオ(DIO)に、ジョナサンの首から下の身体が乗っ取られていたことが判明しました。そして、戦いは子孫の「ジョセフ」「空条承太郎」たちに引き継がれます。
(LUIS FIELD)