マグミクス | manga * anime * game

なぜ『ポケモン』主人公は“レベルアップしない”のか? ヒントは「旅の目的」に隠されていた

物語において主人公の成長は必要不可欠ですが『ポケモン』シリーズにおいて、その成長はどのように描かれたのでしょうか?

『ポケモン』主人公の存在意義って?

1996年に『緑』とともに発売された、初代『ポケットモンスター 赤』(任天堂)
1996年に『緑』とともに発売された、初代『ポケットモンスター 赤』(任天堂)

 今や地球規模で愛されるRPGになった『ポケットモンスター』ですが、その主役はなんといってもポケモンたちです。野生で出会い、捕まえ、バトルを通じて成長していく……その過程をともにするからこそ、ポケモンたちは単なる「ペット」や「使役獣」を超越した存在になります。

 作中においてはもちろんのこと、アニメやマンガといったメディアミックス作品においてもポケモンの成長やトレーナーとの絆は常に物語の軸として機能してきました。

 その一方で『ポケモン』の主人公はどうでしょうか? ゲームのなかで「成長」しているのでしょうか?

 一般的なRPGにおいて主人公は、プレイヤーの分身のような役割を果たしてくれます。『ドラゴンクエスト』シリーズでいえば主人公の勇者が、プレイヤーの分身として旅に出ます。そのなかで、魔物を倒し、レベルを上げ、技や魔法を覚え、成長していくのです。

 そういう意味において『ポケモン』の主人公は、伝統的なRPGの役割から少し逸脱しています。目に見えて成長するのは自分ではなく、ポケモンなのですから。この成長しない主人公(プレイヤー)という課題を『ポケモン』シリーズは、いかにしてクリアしてきたのか、どうやら、その回答はすでに初代『ポケットモンスター 赤・緑』で示されていたようです。

 1996年に発売された『赤・緑』のプレイを開始すると、まず「オーキド博士」による『ポケモン』世界観についてのガイダンスが始まります。マサラタウン内でおおよそのチュートリアルが終わると、博士から1匹ポケモンを譲り受け、さらに「ポケモン図鑑」を完成させるよう頼まれます。そして、これこそがシリーズの根幹を支える『ポケモン』というゲームの目的なのです。

 ここから、主人公はジムリーダー、ライバルに勝利したり、伝説のポケモンを捕獲したり、実にさまざまなイベントを経験しますが、それらはあくまでも「ポケモン図鑑」を完成させるという、大きな目的の過程でした。『ドラクエ』の魔王のような、倒すべきラスボスはいません。

 ロケット団という分かりやすい悪の組織も登場しますが、彼らとの戦いもまたひとつの過程です。あくまでも主人公が果たすべきは「この世界を知ること」ということになります。物語としては、非常に純粋な枠組みです。主人公の家のテレビに『スタンドバイミー』と思しき映画が映っているのも、粋な演出でした。

 主人公の成長に関して、一応ながら数値的なもので示されてはいます。例えばジムリーダーに勝利した際のもらえるバッジの数に応じて、ポケモンが指示通りに動くかどうかのレベル上限が上がります。また、『赤・緑』では「ポケモンリーグ」で四天王に勝利し、さらに道中、何かと競い合ってきたライバルに打ち勝つことで、ストーリーとしてのエンディングを迎えることはできます。ただし、これもあくまでも「副次的」なものです。

 ここまで見てきた通り『ポケモン』の主人公の目的は「この世界を知ること」です。つまり、その世界の知識が増えることが成長と位置付けられており、「ポケモン図鑑」はそれを測る装置です。

 その意味において、わたしたちがプレイすれば、その分だけ主人公が「成長」するという、最高の一体感を味わえるゲームシステムだったのです。現実で、何かに行き詰まったら、『ポケモン』で成長を実感し精神を回復するのも、ひとつの手と言えます。

(片野)

【画像】サトシの後任ってどんなヤツ? こちらがアニメ『ポケモン』令和版主人公です(4枚)

画像ギャラリー

片野関連記事

もっと見る

編集部おすすめ記事

ゲーム最新記事

ゲームの記事をもっと見る