円を描く猫、その中心には一体何が!? あるのは柔らかな毛だけではないかも
漫画家の迷子さんによる描き下ろしエッセイ。体を丸めて、見事な円を描いて眠る愛猫。その中心部分に惹かれてしまいます。それは、ただの「中心」なのでしょうか?
猫は円を描く

漫画家の迷子さんによる描き下ろしエッセイ。
眠る時、体を丸めて見事な円を描く迷子さんの愛猫。その中心に心が吸い寄せられていきます…。
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猫は円を描く。
猫飼いの方は当然ご存知だろう、猫飼いでない方は「猫 丸まる」などで検索をかけその写真でも眺めてほしい。猫はその体で綺麗な円を描けるのだ。伸びきっている時やいろんな所から手足がはみ出ている寝相もあるのだが、たまに本当に綺麗に丸まって寝ている時がある。完全な円の写真が撮れた時など、誰彼構わず円だ円だと見せて回りうざったがられている。
弱点である柔らかな腹をかばっている時の寝相と言われているらしい。本猫にとってはあまり調子の良いときの寝相ではないのかも知れない。せめてその腹が冷えないように布をかけてやることくらいしか自分にできることはない。しかしこの寝相、じっと見ているとどうしても気になることがある。そう、中心だ。
渦を巻いたような寝相、その中心。かばっている腹のまんなか。すべての毛がそこに向かって流れている円の中央。別に何にもないことは分かっている。猫の睡眠の邪魔など人の道に外れた行為をするつもりはない。しかし、気になる。蟻地獄に飲み込まれたらどうなる。渦潮の中心に落ちたらどのくらい深くまで引き込まれる。ブラックホールに吸い込まれたらどこへ行ってしまうのだ。本当にこの先にあるのは柔らかな腹毛だけなのか。こんなにも綺麗な円なのに、『それだけ』なんてことがあるのだろうか?
細く開いた猫の視線を感じて、毛布をかける。猫の描く円はどうにも綺麗すぎていけない。
(迷子)