『パンダコパンダ』を観れば気分は爽快? 多幸感あふれる高畑&宮崎コンビの快作
現在、宮崎駿監督の監督デビュー作『未来少年コナン』が、NHK総合で毎週日曜深夜に放送中です。宮崎監督がまだ監督デビューする前、高畑勲監督とガッチリとタッグを組んで完成させたのが劇場アニメ『パンダコパンダ』と『パンダコパンダ 雨ふりサーカス』です。観れば誰もが元気になる、『パンダコパンダ』二部作の魅力を振り返ります。
空前のパンダブームに沸いた1972年に公開
天気がはっきりしない梅雨の季節は、心までブルーになりがちです。そんなジメジメした気分のときに観たいのが、懐かしのアニメーション映画『パンダコパンダ』(1972年)と『パンダコパンダ 雨ふりサーカス』(1973年)です。
1972年11月は、中国から贈られてきたジャイアントパンダのランランとカンカンが東京の上野動物園でお披露目され、空前のパンダブームに日本中が沸いていました。そんな世相に合わせた形で、同年12月に「東宝チャンピオンまつり」の1本として『パンダコパンダ』は公開されたのです。
1971年に東映動画(現・東映アニメーション)を辞め、Aプロダクション(後のシンエイ動画)に移って間もない高畑勲監督が演出。原案・脚本・画面設定・原画を、高畑監督とともにAプロに移籍した宮崎駿監督が担当。上映時間わずか34分のなかに、若き日の高畑&宮崎コンビのほとばしる才能が惜しみなく詰め込まれています。
『となりのトトロ』の原型となった珍獣親子
主人公となるのは、両親のいない小学生の女の子・ミミ子(CV:杉山佳寿子)。おばあちゃんと一緒に暮らしていますが、おばあちゃんが長崎へ法事で出かけることになり、ミミ子はひとりで留守番します。普通の子ならひとりで留守番なんて怖いはずなのに、ミミ子はいつもとは異なる状況を楽しんでしまうオプティミストです。
そんなミミ子のいる竹藪に覆われた一軒家を訪ねてきたのが、人間の言葉をしゃべるパパンダ(CV:熊倉一雄)とその息子・パンちゃん(CV:太田淑子)のパンダ親子です。ひとりで留守番をして、初めてのお客さんがパンダ親子なことに、ミミ子は大感激。喜びのあまり逆立ちしながら、「素敵!」とパンダ親子を迎え入れるのでした。
作画監督を務めたのは、東映動画時代からの盟友・大塚康生氏と小田部羊一氏。宮崎駿監督の大ヒット作『となりのトトロ』(1988年)のルーツとなったパンダ親子のもっさりした造形が、とってもラブリーです。ミミ子ならずとも、頬ずりしたくなってしまいます。おまわりさん役を『ルパン三世』(日本テレビ系)の怪盗・ルパン三世役でおなじみの山田康夫氏が演じるなど、細かい遊び心もいっぱいの作品です。