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ジブリ最高傑作の声ある『かぐや姫の物語』を原作至上主義で観たら? 炎上レベルの「改変」とは

名作映画『かぐや姫の物語』は、どれだけ原作に忠実だったのでしょうか?高畑勲監督の「改変」に注目しました。

原作からガッツリ削られた部分

『かぐや姫の物語』静止画より (C)2013 Isao Takahata, Riko Sakaguchi/Studio Ghibli, NDHDMTK
『かぐや姫の物語』静止画より (C)2013 Isao Takahata, Riko Sakaguchi/Studio Ghibli, NDHDMTK

 原作つきのアニメや映画というものは、時にその原作を愛するファンから、怒りを買ってしまいます。大切な場面が「大人の都合」で改変されていたり、描写自体が疎かだったりすれば、それこそ炎上騒動にまで発展しかねません。原作への敬意(の表出)もまた、作品評価に大きな影響を与えています。

 では、日本最古の物語と言われる『竹取物語』(作者不明)を原作とした、高畑勲監督の遺作『かぐや姫の物語』はどうでしょうか。「アカデミー長編アニメ映画賞」のノミネートをはじめ、世界的な評価を獲得し、2026年1月の「金曜ロードショー」でも絶賛の声が相次いだ傑作ですが、本作も「原作つき」のアニメ映画であることには変わりありません。

 原作『竹取物語』をこよなく愛するファンから、怒りを買うような改変はあったのか確認していきましょう。

 まず『かぐや姫の物語』において、原作の改変はたしかにありました。もちろん本作は原作『竹取物語』のあらすじに関しては、驚くほどに忠実です。私たちが子供の頃から絵本で親しんできた、あるいは古典の授業で習ってきた、あの『竹取物語』を真正面からアニメーション映画に仕上げていました。

 とはいえ、オリジナル要素も多数あります。たとえば、かぐや姫の幼なじみの主要キャラである「捨丸」は、原作には登場しない独自のキャラクターです。

 そのほか、SNSで大きな話題を呼んだ、丸っこくて可愛らしい侍女見習い「女童」も、オリジナルキャラで、育ての親である「媼(おうな)」も原作ではほとんど登場しないのに対し、本作では「かぐや姫」の良き理解者として描かれています。もし仮に『竹取物語』の原作至上主義の方がいれば、こうした変更は、眉をひそめてしまうかもしれません。ただ幸いにして、今挙げたオリジナル要素はおおむね好評で受け入れられました。

 しかしながら、炎上とまではいかずとも、違和感を抱く「改変」が行われたキャラクターもいます。その人物とは、「御門(みかど)」にほかなりません。

 とはいっても、高畑監督が「美男だけど一ヶ所バランスを崩してみてはどうか」とデザインに関してアドバイスしたという、あの「尖ったアゴ」のことではなく、かぐや姫と御門(帝)の関係が、原作と映画とでは大きくかけ離れているのです。

『かぐや姫の物語』の御門は、この世の全てが手に入ると思っているような、唯我独尊的な面が強調されています。後ろから抱きつき、慄然するかぐや姫に「私がこうすることで喜ばぬ女はいなかった」とささやく、あのおぞましい名シーンはその象徴ともいえるでしょう。他方、原作『竹取物語』の帝はどうかと言えば、少し違います。

 たしかに原作の同場面でも、帝はかぐや姫を無理に連れて帰ろうとしました。このあたりは共通しています。しかしその後、原作では帝とかぐや姫は手紙のやり取りを実に3年ほど続け、互いの心を慰め合う関係に発展するのです。

 また、かぐや姫が月に帰る際、育ての親だけでなく、帝のこともちゃんと気にかけており、最後には帝に「不老不死の薬」まで献上しています。しかし、帝はかぐや姫のいない世界で長生きしても意味はないと、日本で一番高い山の上で薬を焼かせました。そして、その山は「富士(不死)山」と呼ばれるようになります。

 このかぐや姫と、帝との美しい関係性は『かぐや姫の物語』では大胆にカットされていました。この点に関しては、少なからぬ違和感を覚える人の声も、ちらほら確認できます。これが別作品であれば、大いに荒れ得る改変です。

 では、どうして高畑監督はこのような改変をしたのでしょうか。『かぐや姫の物語』は「姫が月に帰らなくてはならない理由」に迫った作品です。そのなかで高畑監督は、穢れた場所である地球に魅かれてしまった姫が、罰として地球に降ろされ、ようやくその穢れに気づき助けを求めたから、という解釈を示します。

 かぐや姫の地上での日々は罰だった、というわけです。そして助けを求めたシーンこそ、御門に抱きすくめられた例の場面でした。私見ながら、あの瞬間の嫌悪感を物語の核に置いたとなれば、原作で描かれた御門との交流は、本作にとっては不要だったのではないでしょうか。

 大胆な「改変」が行われていた『かぐや姫の物語』ですが、傑作であることには変わりありません。

『アルプスの少女ハイジ』『母をたずねて三千里』『赤毛のアン』『火垂るの墓』と、錚々たる「原作」を手掛けてきた高畑勲監督にしかできない、神がかったバランス感覚だったと言えるでしょう。「ジブリ最高傑作だと思う」という意見も多い高畑監督のこの仕事により、日本最古の物語はこれからも忘れられることなく、日本最古の物語のまま受け継がれていくはずです。

(片野)

【画像】え、「やっぱ笑っちゃう」「原作と違いすぎる」 コチラが『かぐや姫の物語』原作改変されてある意味大人気のキャラです

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片野

構成作家。1960年代カルチャーを好む。これまでに「ウルトラ」シリーズをはじめとする特撮番組、「ドラゴンクエスト」「ポケットモンスター」など国民的RPGシリーズ、ギャグマンガのジャンルで記事を多数執筆。

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