ラストに「ズルい演出」が… 視聴者の心を震わせた平成大河ドラマ 主人公の終焉3選
1年間も生活をともにする大河ドラマは、最終回の寂しさや感動もひとしおです。平成で人気を博した『真田丸』『龍馬伝』『新選組!』の最終回を振り返ってみましょう。
その演出はずるいって……。1年間の歩みが走馬灯のようによみがえる最終回

歴史上の人物の生き様を新たな解釈で描くNHK大河ドラマは、1963年から放送が始まりました。作品数は2025年時点で64本にものぼります。先日、マグミクス編集部で実施した「最も記憶に残っている平成の大河ドラマは?」というアンケートで上位に選ばれた3作品の幕引きをみてみましょう。
まずは2016年に放送された『真田丸』です。「真田幸村」としても知られている「信繁」(演:堺雅人)が、家族や家臣とともに戦国の乱世を生き抜く姿が描かれました。最終回の第50話は、幸村を中心とした豊臣方と、徳川軍の最後の戦いが見どころです。
一度は不利な戦況を覆した幸村でしたが、豊臣方の小さなすれ違いが重なり敗戦に追いやられてしまいます。しかしたった一騎となっても、幸村は「徳川家康」(演:内野聖陽)を狙い続けました。乱世でしか生きられない幸村と、戦のない世を築こうとする家康の対比が印象的な場面です。
幸村が自害するシーンでは、直接の切腹描写はありません。生き延びた人びとに思いを馳せながら穏やかな表情で生涯を終えました。ラストは幸村の走馬灯かのように、メインテーマとともにこれまでのダイジェスト映像が流れます。1年間幸村の戦いを見守った視聴者にとっても、幸村と同じく思い出が一気によみがえる最終回だったといえるでしょう。
続いては2010年に放送された『龍馬伝』です。幕末の世で新しい時代を創ろうと力を尽くした「坂本龍馬」(演:福山雅治)の生涯を描きました。旧知の仲である「岩崎弥太郎」(演:香川照之)が倒幕から15年後に龍馬について語り聞かせているという、ナレーションを巧みに使った演出も印象的です。
最終回となる第48話「龍の魂」では、近江屋での龍馬暗殺シーンが臨場感たっぷりに映像化されました。大政奉還後、龍馬は最後の仕事として「新政府綱領八策」を考えます。しかし誰を盟主に据えるかが明記されていなかったため、各藩からの恨みが龍馬に向けられました。
龍馬暗殺シーンでは直前までの穏やかな様子が一変、わずかな時間で部屋中が血の海になります。凄惨な場面ですが、初回放送の際に選挙速報のテロップが入ってしまったため、そちらが記憶に残っている視聴者も多いでしょう。
龍馬が息を引き取った後、エンドロールとともに15年後の弥太郎が登場します。龍馬について語るセリフは1話目と同様ですが、ニュアンスは別物です。そしてもうひとりの主人公だった弥太郎の死で、物語が締めくくられました。
最後は2004年に放送された『新選組!』を振り返ります。新選組隊士を等身大の若者としてとらえ、青春群像劇に仕上げた異色作です。俳優陣も隊士たちの実年齢に近いキャスティングで、大河ドラマに新しい風を吹き込んでいます。
最終回となる第49話「愛しき友よ」では、新選組隊長「近藤勇」(演:香取慎吾)が新政府軍に捕えられ、処刑されるまでが描かれました。「土方歳三」(演:山本耕史)は本心では勇を助け出したいものの、犠牲になった仲間たちに報いるためにも戦い続けることを選びます。
ラストカットは勇が処刑される瞬間でしたが、直後にメインテーマとともに1話からのダイジェスト映像が流れました。すでに散っていった仲間たちにもう一度会えるだけでなく、未来への希望も抱かせてくれる粋な演出です。
ちなみに本作には、小中学生の頃に夢中になったファンも多く見られます。本作をきっかけに日本史に興味を持ったり、新選組ゆかりの地を訪れたりした人もおり、放送終了後も長く愛される作品になりました。
(ハシビロコ)