夏休みを彩った劇場2作目『ガンダム 哀戦士』 主題歌を熱唱した井上大輔氏の波乱の生涯とは?
大ヒットした主題歌「哀戦士」の誕生秘話

主題歌「哀戦士」を作曲した井上大輔氏は、富野監督とは日大芸術学部映画学科の同級生という間柄でした。在学時の井上氏は「ジャッキー吉川とブルー・コメッツ」での芸能活動で忙しく、授業にはほとんど顔を見せなかったそうです。富野監督とはわずかに面識があるという程度の仲でした。
富野監督は『哀・戦士編』の公開が決まると、井上氏の自宅へ直接電話をして「君はアニメをバカにするかい?」と尋ね、「いいや」と答えた井上氏に主題歌を依頼します。久しぶりに再会したふたりは六本木の焼き鳥屋で酒を飲み交わし、熱く映画論を語り合ったそうです。お互いにフランスのヌーベルバーグ映画から強い影響を受けた世代でした。大学時代は交流がなかったものの、青春時代が帰ってきたような一夜を過ごしたのではないでしょうか。
当時の井上氏はソロミュージシャンに転向したばかりでした。富野監督(井荻麟名義)が作詞した「哀戦士」の歌詞を1字も変えることなく作曲・編曲し、さらには歌唱することを申し出ています。「ブルー・コメッツ」時代よりグッと大人になった井上氏の渾身の歌唱もあって、「哀戦士」は映画とともに大ヒットします。
劇場版第1作『機動戦士ガンダム』の主題歌「砂の十字架」は、谷村新司さんが作曲していますが、レコード業界の不文律に阻まれ、谷村さんに歌ってもらうことは叶いませんでした。同級生からの申し出は、富野監督も最高にうれしかったはずです。



