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やなせたかしの親友「いずみたく」の提案きっかけで生まれた「アンパンマンに足りなかったモノ」とは? 『あんぱん』ではどう描く

『あんぱん』の「いせたくや」のモデルである作曲家、いずみたくさんは、やなせたかしさんにある重要な提案をしていました。

いずみたくさん提案のミュージカルで、やなせさんが気付いたこととは

柳井嵩役の北村匠海さん(2020年11月、時事通信フォト)
柳井嵩役の北村匠海さん(2020年11月、時事通信フォト)

『アンパンマン』の作者、やなせたかしさんとその妻の暢さんをモデルにした2025年前期のNHK連続テレビ小説『あんぱん』の104話では、「柳井嵩(演:北村匠海)」と何度も仕事をして、名曲「手のひらを太陽に」も生み出した作曲家の「いせたくや(演:大森元貴)」が、嵩にTVドラマ『CQCQ』(実在のドラマ『ハローCQ』が元ネタ)の脚本を頼むシーンが描かれました。その際に、たくやは嵩とこれからも曲を作り続けていこうという約束も交わしています。

 たくやのモデルで、数々のヒット曲を生み出した作曲家のいずみたくさんは、1960年のミュージカル『見上げてごらん夜の星を』で出会って以降、やなせさんと何度も仕事をした盟友でした。やなせさんといずみさんのタッグで生まれた作品として、いちばん有名なのはやはり名曲「手のひらを太陽に」(1961年)ですが、いずみさんはやなせさんが『アンパンマン』を生み出した後も、作品にとって重要な役割を果たしています。

 やなせさんは1969年に雑誌「PHP」(PHP研究所)で連載された童話『十二の真珠』の1話「アンパンマン」(この頃はあんぱんを配る普通の人間という設定)を発表し、その後の1973年に絵本『あんぱんまん』(フレーベル館)を描きました。この時点で、やなせさんが「困っている人に食べ物を届ける」という「逆転しない正義」を持つヒーローの像は完成していましたが、現状と違うのは「アンパンマンと戦う悪役」がいなかった点です。

 いま現在、アンパンマンの敵として誰もが知る「ばいきんまん」は、やなせさんがいずみさんと仕事をしたことをきっかけに生まれていました。

 アンパンマンの絵本が売れ出してしばらくしたあるとき、いずみさんはやなせさんに「アンパンマンをミュージカル化しよう」と提案してきたといいます。そうして、1976年に最初のミュージカル版『アンパンマン』である『怪傑アンパンマン』が、六本木のフォンテーヌビルの地下で上演されました。主演はタレントの海野かつをさんで、このときはアンパンマンの顔の下に海野さんの顔が出ている形式の被り物です。

 その際、やなせさんは観客の反応を見て「(『アンパンマン』には)アレが欠けているんだ」と、ある発見をしました。『怪傑アンパンマン』は悪役が普通の人間で、「アンパンマンの相手役としてはパンチが欠けている」と気付いたのです。

 そして、やなせさんは「食品の敵はバイキン」と考えて「ばいきんまん」を思いつき、戦前に田辺製薬のデザイナーとして働いた際に描いた、悪魔のような小人が槍を持っているという菌のイメージをもとにデザインを完成させ、1979年の絵本『あんぱんまんとばいきんまん』で初登場させました。2作目のミュージカル『ミュージカル とべ!アンパンマン-アンパンマンとおむすびまん-』(1983年上演)の際には、やなせさんは演出担当の藤田敏雄さんから「ばいきんまんというのは凄いね。普通思いつかないよ」と褒められたそうです。

 その後、このミュージカルシリーズのなかで、ばいきんまんの「ハヒフヘホー」という定番フレーズ(いろいろ試した結果「は行」だけ子供たちが大笑いしたとのこと)も決まり、のちのアニメ『それいけ!アンパンマン』(1988年~)にも通じる「アンパンマンvsばいきんまん」の構図が確立されました。

 やなせさんに重要なきっかけを与えたいずみさんは、1992年に亡くなるまで『それいけ!アンパンマン』にもさまざまな曲を提供しています。

『あんぱん』の物語が1970年代半ばに差し掛かるのはまだ先になりそうですが、たくやがどのようにミュージカル化を提案するのか、嵩がどのようにばいきんまんを生み出すのかも要注目です。

参考資料:『アンパンマン伝説』(フレーベル館 著:やなせたかし)『人生なんて夢だけど』(フレーベル館 著:やなせたかし)、『アンパンマンの遺書』(岩波書店 著:やなせたかし)、『やなせたかしの生涯 アンパンマンとぼく』(文藝春秋 著:梯久美子)

(マグミクス編集部)

【画像】え…っ? 「めっちゃ美人」「こりゃ、やなせさんもホレるわ」 こちらが妻・暢(のぶ)さんの若き日の姿です

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