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『あんぱん』で話題の『まんが学校』より前に日テレで「切紙アニメ」を作ってた? やなせたかしが「一番印象に残ってる」番組とは

『あんぱん』の嵩のモデルであるやなせたかしさんは、話題の『まんが学校』より前に、日テレである番組に関わっていました。

『アンパンマン』アニメ化の約30年前

柳井嵩役の北村匠海さん(2020年11月、時事通信フォト)
柳井嵩役の北村匠海さん(2020年11月、時事通信フォト)

『アンパンマン』の作者、やなせたかしさんとその妻の暢さんをモデルにした2025年前期のNHK連続テレビ小説『あんぱん』第21週では、さまざまな仕事を引き受けている「柳井嵩(演:北村匠海)」が、NHKのTV番組『まんが教室』でマンガの先生として絵描き歌を披露したことが話題になりました。

 この『まんが教室』は、やなせさんが1964年から66年まで出演した『まんが学校』が元ネタで、この番組に出演したことで漫画家になりたいという子供を持つホステスたちから話しかけられる、という場面も実話がもとになっています。やなせさんにとっては子供たちに接する機会が増え、のちの児童向けの作品、とくに『アンパンマン』誕生のきっかけになった重要な仕事ですが、本人が関わったなかで一番印象的だった番組はまた違うようです。

 やなせさんはフリーになってから脚本、作詞、舞台美術など多彩な仕事をしてきたことで有名で、さまざまなTV局で構成の仕事もしていました。作詞をした名曲「手のひらを太陽に」(作曲:いずみたく)も、1961年にやなせさんが関わっていた日本教育テレビ(後のテレビ朝日)の朝のニュースショーで最初に披露されています。

 いろいろな番組に携わったやなせさんが、自伝『人生なんて夢だけど』(フレーベル館)で「一番印象に強く残っている」と語ったのは、日本テレビで1957年から59年まで放送された『漫画ニュース』(途中から『漫画ショック』に改題)です。

 こちらは現存するフィルムなどはもうないそうで、どんな番組かは確認できません。やなせさんによると21時台のニュース番組の5分間が編成の都合上空白になったので、ニュースに関係したものであれば自由に何でもやってほしいとの依頼があったとのことで、やなせさんは「その日のニュースを読み、その場で漫画アニメにする」という形式の『漫画ニュース』を作りました。

『人生なんて夢だけど』の説明では、「局のドラマの稽古場の片隅にベニヤ板で囲いをつくり、そこへ十六ミリのカメラが置ける撮影台を設置して、コマ落としで撮影」して、「ごく原始的な初期の手法」である切り紙アニメを作っていたそうです。関わる漫画家やカメラマンも、すべてやなせさんが選びました。

 その後の工程についても、「撮影が終わると急いで現像に出し、アルバイトが局へ持って帰る。画面を見ながら作曲して生バンドで伴奏音楽をつけるという、今では考えられない手数と時間のかかるぜいたくなことをやりました」と振り返っています。

 ちなみに、アニメの内容も曲も瞬発力で仕上げて間に合わせないといけない過酷な現場のなかで、やなせさんが素晴らしいと思う楽曲を付けていた人物がいました。それは、のちに童謡「一年生になったら」「うたえバンバン」や、映画『男おとこはつらいよ』、大河ドラマ『武田信玄』、人気バラエティー『8時じだョ!全員集合』など、数々の名曲を生んだ作曲家の山本直純さんです。当時はまだ、東京芸大指揮科に在学中でした。

 大変な現場ながら、やなせさんはこの仕事に関して「当時は実に大胆不敵というか、依頼がおおらかで面白い時代でした」と振り返っています。この『漫画ニュース』から30年後の1988年、同じ日テレでやなせさんの代表作『アンパンマン』のアニメ『それいけ!アンパンマン』がスタートしました。

 さて、やなせさんはどのような「切り紙アニメ」を作っていたのでしょうか。やなせさんが亡くなる2013年まで秘書として寄り添ったのちに、株式会社やなせスタジオ代表取締役になった越尾正子さんの著書『やなせたかし先生のしっぽ ~やなせ夫妻のとっておき話~』(小学館)では、越尾さんがやなせさんの切り紙アニメの実演を見たエピソードが語られています。

 切り紙アニメが披露されたのは、アニメ映画化もされたやなせさんの代表作の絵本『チリンの鈴』の上演会だったそうです。上演会で嵐の夜の場面になると、やなせさんはOHP(オーバーヘッドプロジェクター)の上に、黒い紙をはさみで切って作った簡易的な仕掛けを置き、紙の左右を持って大きく開けたり小さく開けたりして「稲光」を作ったといいます。

 この上演後、やなせさんはかなりぐったりしていたそうです。おそらく『漫画ニュース』でもこのように創意工夫を凝らし、体力を使ってさまざまなニュースを再現していたのでしょう。

(マグミクス編集部)

【画像】え…っ? 「めっちゃ美人」「こりゃ、ホレるわ」 こちらがやなせさんの妻・暢(のぶ)さんの若き日の姿です

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