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朝ドラでついにアンパンマンの原型が誕生!やなせたかしはなぜ「あんぱん」を題材に選んだ?

『あんぱん』の嵩のモデルであるやなせたかしさんは、なぜ、あんぱんが題材のヒーローを生んだのでしょうか。

弟にも似ているアンパンマン

柳井嵩役の北村匠海さん(2020年11月、時事通信フォト)
柳井嵩役の北村匠海さん(2020年11月、時事通信フォト)

『アンパンマン』の作者、やなせたかしさんと妻の暢さんをモデルにした2025年前期のNHK連続テレビ小説『あんぱん』第21週105話の最後では、「柳井嵩(演:北村匠海)」が妻「のぶ(演:今田美桜)」の「嵩さんが本当に描きたいもんは何?」という言葉をきっかけに、「あんぱんを配るおじさんのヒーロー」(このときは普通の人間)を生み出しました。

 こちらは、1969年にやなせさんが雑誌「PHP」(PHP研究所)で連載した童話『十二の真珠』の1話、空を飛べる普通の男性があんぱんを配る「アンパンマン」が元ネタです。放送残り1か月ほどでついにアンパンマンの原型が生まれ、ネットは盛り上がりを見せています。

『あんぱん』では、嵩は幼少期から世話になっているパン職人「屋村草吉(演:阿部サダヲ)」が、あんぱんを勧めてくれたことを思い出して初期のアンパンマンを描いていました。ただ、草吉は脚本担当の中園ミホさんが各種インタビューで語っている通り、『アンパンマン』の「ジャムおじさん」をイメージして生み出した、完全なフィクションのキャラクターです。

「お腹を空かせている人に自分の顔を分け与えるヒーロー」が、やなせさんが戦時中に中国で味わった飢餓体験をもとにした、「逆転しない正義」を持つ存在であることは、さまざまな書籍で語られています。しかし、やなせさんはどういうきっかけで、数ある食材のなかでも「あんぱん」がモチーフのヒーローを生み出したのでしょうか。

 やなせさんは、さまざまな自伝のなかで特に『アンパンマン』についてだけ集中して書かれた『アンパンマン伝説』(1997年初版、フレーベル館)の冒頭で、「アンパンマンをいつ思いついたかって聞かれても、はっきりしない」と語っています。やなせさんは『あんぱん』で出てきたNHKの番組『まんが教室』の元ネタ『まんが学校』(1964年~66年)への出演をきっかけに、学童向け雑誌、学習誌の仕事が増えており、そのなかにこんなものがあったそうです。

「パン工場の煙がパンのかたちに似ていて、それが空へ上がっていく。カミナリの子どもがまちがえてそのパンのかたちの雲を食べると、煙くさくてハクションという、じつにくだらないおはなしをかいたんだが、これがなぜだか好評だった」(『アンパンマン伝説』より)

 やなせさんは「パンとのつきあいは、これが一番最初かもしれない」と振り返っています。

 また、やなせさんが亡くなる前年の2012年に出演した、NHKの番組「100年インタビュー」の内容を書籍化した『何のために生まれてきたの?』(PHP研究所)では、「パンのなかでもなぜあんぱんを選んだのか」という疑問について、「あんパンは表面がパンで、中身があんこ、食事にも、お菓子にもなることに着目して、最初からアンパンマンと名付けました」と述べていました。

 思いついたタイミングははっきりしていないというものの、やなせさんはアンパンマンというヒーローに強くこだわります。1973年にフレーベル館から絵本『あんぱんまん』を発表した際には、編集部から「アンパンマンの絵本はこれ一冊で、もう描かないでください」と言われ、ある幼稚園の先生から「顔を食べさせるなんて残酷です」と手紙が届き、絵本評論家からは「こんなくだらない絵本は、図書館に置くべきではない」と言われたものの、彼は諦めませんでした。

 やなせさんは絵本を出してもらえないなら、と自分が編集長を務めていた月刊誌「詩とメルヘン」「いちごえほん」(サンリオ)に、マンガ版の『アンパンマン』を連載します。そうしているうちに絵本『あんぱんまん』が幼い子供たちの間でどんどん人気となっていき、1976年からミュージカルシリーズが始まり、1988年にアニメ化と、誰もが知る大ヒット作品になっていきました。

 ちなみに、やなせさんは『アンパンマン伝説』のなかで、おじさんではなく現在の顔があんぱんのアンパンマンを書き始めたとき、太平洋戦争で戦死した弟の千尋さんを思い出して、「なにか不思議ななつかしさをおぼえた」ことを語っています。

 別の自伝『人生なんて夢だけど』(2005年初版、フレーベル館)では「(弟の千尋は)幼年時代はコンパスで描いたような丸顔でした。アンパンマンの顔を描くとき、どこか弟に似ているところがあって、胸がキュンと切なくなります」とも綴っていました。

『あんぱん』ではまだおじさんの姿をしているアンパンマンですが、今後、嵩が「顔があんぱんのヒーロー」をデザインする際には、亡き弟「千尋(演:中沢元紀)」を思い出す場面があるかもしれません。

(マグミクス編集部)

【画像】え…っ? 「めっちゃ美人」「こりゃ、ホレるわ」 こちらがやなせさんが生涯大事にした妻・暢(のぶ)さんの若き日の姿です

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