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主人公・貴樹はリア充? アニメでは描かれなかった『秒速5センチメートル』小説版の真実

新海誠監督による不朽の名作『秒速5センチメートル』はアニメ版と小説版が存在します。小説版ではアニメで描かれなかった人物やエピソードなども追加されており、物語の奥行きや登場人物の心情をより深く理解できる内容になっています。実写映画の公開を前に、小説版の世界を少しだけのぞいてみましょう。

澄田花苗はちゃんと想いを伝えられた?

画像は劇場用実写映画『秒速5センチメートル』ポスタービジュアル (C)2025「秒速5センチメートル」製作委員会
画像は劇場用実写映画『秒速5センチメートル』ポスタービジュアル (C)2025「秒速5センチメートル」製作委員会

 劇場用実写映画『秒速5センチメートル』の公開が目前に迫り、改めてアニメ版を見返している人も多いのではないでしょうか? 実は本作は、新海誠監督自身による小説版もあり、アニメでは描かれなかった人物やエピソードが加えられています。その内容を知れば、アニメはもちろん、実写映画もより楽しめるはずです。

●想いを伝えられなかった澄田花苗の「その後」

 2007年に劇場公開されたアニメ版は、惹かれ合う男女の「時間」と「距離」による変化を、短編3話の連作構成で描かれます。小説版も同様に3話仕立てで、第2話「コスモナウト」では、主人公「遠野貴樹」に思いを寄せる「澄田花苗」の視点で物語が綴られました。

 花苗は約5年間も貴樹に片想いしている同級生で、一度は告白を決意するものの、結局その思いを伝えることはできません。しかし小説版では、大人になった貴樹の回想を通して、彼が上京する日に花苗が見送りに訪れ、「ずっと遠野くんのことが好きだったの。今までずっとありがとう」と想いを告げていたことが明かされます。

 いずれにせよこの恋が実ることはありませんが、自分の気持ちにけじめをつけられた花苗の姿は、ひとつの救いともいえるのではないでしょうか? 実写映画では、俳優の森七菜さんが花苗の切ない心情をどのように表現するのか、注目が集まります。

●意外とリア充だった!? 遠野貴樹の大学時代

 アニメ版では小学生時代に経験した初恋を軸に、貴樹の高校時代や社会人になってからの物語が紡がれました。そのなかに大学時代は登場しませんでしたが、小説版ではわずかながら大学生活の様子が描かれ、そこでの恋愛遍歴にも触れられています。

 貴樹に初めて恋人ができたのは、大学1年生の秋頃でした。相手はアルバイト先で知り合った同い年の女性で、関係は1年半ほど続きました。しかし彼女は別の男性から告白を受けたことをきっかけに、「遠野くんはそれほどあたしを好きじゃない」と別れを告げます。

 さらに大学3年生になると、今度は別のバイト先で知り合った早稲田の女子学生と交際を始めます。彼女は周りが放っておかないほどの美貌とスタイルを持つ女性でしたが、関係はわずか3か月で破局。この恋も円満には終わらなかったものの、大学生活の多くを恋人と過ごしていたことを思えば、ある意味で充実していたともいえそうです。

●確かに愛や幸せはあった、水野理紗との交際

「水野理紗」は、社会人になった貴樹が3年間付き合っていた女性です。アニメ版では交際の終盤のみが描かれ、理紗のほうから別れを切り出します。その際に送られた「私たちはきっと1000回もメールをやりとりして、たぶん心は1センチくらいしか近づけませんでした」というメールの文面は、多くの人の記憶に残っているのではないしょうか?

 対して小説版は別れだけでなく、ふたりの馴れ初めや穏やかな日々までもが丁寧に描かれました。貴樹が理紗のためにわざわざ会社を抜け出し、花束を用意する場面もあり、ふたりの間に確かな愛が育まれていたことが分かります。

 またメールの文面もアニメ版とは大きく異なり、理紗は貴樹のことがいまでも好きで、貴樹もきっと自分のことを想ってくれているだろうと前置きしたうえで、「でも私たちが人を好きになるやりかたは、お互いにちょっとだけ違うのかもしれません。そのちょっとの違いが、私にはだんだん、すこし、辛いのです」と胸中を明かしていました。

 ちなみに実写映画版では、貴樹と同じ会社に勤める同僚役として多くの俳優がキャスティングされており、社会人編がアニメ版以上にしっかり描かれる可能性があります。アニメ版と小説版を比べると、「では実写版ではどうなるのか?」と、2025年10月10日(金)公開の映画に期待が高まります。

(ハララ書房)

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エンタメ記事専門の編集プロダクション。漫画・アニメ・ゲームはもちろん、映画やドラマ、声優にも精通。メイン・サブを問わず、カルチャーの最前線を追いかけていきます。