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百合ホラーゲーム『夜、灯す』 少女たちの情念が絡み合う世界を覗き見たい方に。

キーアイテムとしての「箏」

箏曲部のエース、十六夜鈴の夢にたびたび現れる小夜子。「お姉さん」と呼ばれる彼女の登場により、さまざまな怪異が箏曲部の少女たちを巻き込んでいく
箏曲部のエース、十六夜鈴の夢にたびたび現れる小夜子。「お姉さん」と呼ばれる彼女の登場により、さまざまな怪異が箏曲部の少女たちを巻き込んでいく

 さて、本作で筆者が注目したのは、キーアイテムとして箏(こと)が使われている点です。ゲームの世界ではメジャーとは言えない、というより扱っている作品がまず思い当たらないレアアイテムです。

 決して現代音楽のなかでは主流とは言えない楽器ではありますが、作中では架空の流派である皇道流が登場し、ストーリー上きわめて重要な役割を果たすこととなります。作中には箏に関する知識も豊富に入れ込まれており、知らない世界をひとつ、垣間見せてもらうことができました。

 この百合、ホラー、箏など、ゲームの世界ではほとんど見られない要素を取り入れ、ストーリー化したのが、シナリオライターの永田たま氏です。コンシューマーでは本作がデビュー作のようですが、ソーシャルゲームアプリの執筆を行うシナリオ会社「ストーリィベリー」の代表を務め、多数の作品を執筆しておられます。今後、どのような活躍を見せて下さるのか期待できる方だと感じられました。

 また、魅力的なキャラクターの数々を生み出し、作中の多くのビジュアルを書き上げたイラストレーターであるカオミン氏の力も、本作を語るには決して欠かすことはできないでしょう。鈴や小夜子をはじめとした多くのキャラクターたちの可愛らしさと百合百合しさ、そしてホラーシーンの鮮烈さ、いずれの描写も表現しきれる柔らかさと鋭さを併せ持った筆致が、本作に命を吹き込んでくれています。

 ただ惜しむらくは、少々ボリュームが不足しているようにも感じられました。ジャンルがアドベンチャーなので当然ではありますが、ゲームというよりも「読む小説」としての傾向が強い作品です。たっぷりと時間を使って遊びごたえがあるタイトルとぶつかり合いたいという方ではなく、女の子たちの情念が絡み合う女の園を見つめていたいという方にこそ、お勧めしたいタイトルです。

 特に、『マリア様がみてる』を好きな方なら、フィーリングが合う可能性は高いでしょう。女の子同士のひと夏の青春物語、一度体験してみてはいかがでしょう?

(ライター 早川清一朗)

●『夜、灯す』プロモーション映像(公式)

【画像】深まっていく少女たちの絆と「闇」…『夜、灯す』プレイ画面(9枚)

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