百合ホラーゲーム『夜、灯す』 少女たちの情念が絡み合う世界を覗き見たい方に。
2020年7月30日に日本一ソフトウェアから発売された『夜、灯す』は、ホラー百合アドベンチャーゲームという新たな機軸を生み出した意欲作です。ホラー・サスペンスを交えた女の子同士の青春物語は、どのようなプレイ体験をもたらしてくれるでしょうか。
「百合×青春」+ホラーの新機軸

2020年7月30日に日本一ソフトウェアからプレイステーション4、ニンテンドーSwitch向けに発売された『夜、灯す』は、5人の少女によるひと夏の青春を怪異とともに描くアドベンチャーゲームです。ホラーは苦手なのに、なぜか本作をプレイすることになったゲームライターの早川清一朗さんがレビューを行います。
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最初に書いておくと、筆者はホラーが超苦手です。たとえそれが、美少女の幽霊であっても。
いきなりのネタバレになりますが、本作は若い女の子の青春物語に、空気を読まずちょっかいをかける幽霊さんの物語です。人によっては違うとおっしゃるかもしれませんが、筆者はそう読み取りました。
もう本当にね、登場する女の子たちが可愛いんですよ。しかし考え方の違いによる衝突、秘めた想いを暴かれ激高、そして互いに赦(ゆる)しあい仲良くなろうかというタイミングで……いきなり美少女幽霊こと小夜子さんが現れて、百合百合しいゲームが一気にホラーサスペンスになるのです。作品ジャンルそのものが一瞬で切り替わるこの面白さ、実にいいですね。
特にこのゲーム、ストーリーが進行するとたびたび選択肢が登場するのですが、かなり失敗率が高く、「え、このゲームでこんな展開予想しないって!」という勢いで一気にゲームオーバーになったりします。とはいえオートセーブが優秀ですぐにやり直せるため、明らかに「いや、この選択肢はヤバいだろう……」という空気がプンプンしていても、ノリで突き進めるのでけっこう楽です。
とはいえ主人公の十六夜 鈴(以下、鈴)が死にかけて(?)いるグラフィックも回収しなければいけませんし、全テキストを読むためには分かっていても進まなければいけない道もあるのです。
章を進めるごとに深まっていく少女たちの関係。とある理由から鈴にまとわりつき、周囲の人間を排除しようとする小夜子。
ああ、これが百合なのか。愛と、深まった愛ゆえの凶暴性が、百合を構成する強力な一要素たりうるのだと、思い知らされるような展開が続いていくのです。百合とは、実にいいものですね。