令和の「ヒャッハー」の裏側とは? 新アニメ『北斗の拳』音響監督インタビュー
ベテラン声優がザコを演じる理由

ーー『北斗の拳』といえば、ザコたちの歓声や断末魔も大きな魅力です。令和版ではどのように作っていったのでしょうか。
小沼 「ヒャッハー」は当時の千葉繁さんが作った伝統です。ただ、それをそのままやるのは令和の選択肢として違うし、かといって、「ヒャッハー」を禁止するのも違うんです。
ザコたちは単なるモブキャラ(その他大勢)ではないので、他の作品の「学生A」役のように若い新人では無理です。
そこで「千葉さんの後という覚悟」を持ってやってくださる実力のある方にお願いしよう、ということで、福島潤さんと間宮康弘さんにレギュラーとして加わっていただきました。ふたりが中心となって、「俺は今日こう死のうと思うけど、お前どうする?」みたいに、ザコ役同士で打ち合わせして演じてくれました。
ーーSNSではスタッフロールで福島さんの名前が見つかったと毎週話題になっていました。ゲスト出演やサプライズではなく、最初からレギュラーだったのですね。
小沼 そうです、最初からです。絶対に失敗できない役だったので。いわゆるサプライズ起用のつもりはありませんでしたが、事前発表しないことで、結果的にSNSなどで話題になればいいな、という意識はありました。
ーーおなじみの断末魔については、どのようにディレクションされたのですか。
小沼 「ひでぶ」「たわば」といったお決まりの断末魔に関しては、変えずに言ってくださいとお願いしました。それ以外は新しいものを作るつもりで頑張ってください、と伝えています。「あべし」は逆に昭和版をリスペクトして、遊戯機などで長年ザコ役を務められてきた山崎たくみさんをお呼びして、やっていただきました。
●荒廃した世界の狂気とギャグの両輪を
ーーザコたちの芝居付けでは、どのようなことを意識されましたか。
小沼 北斗のザコっぽいセリフを言うだけなら、そんなに難しくないと思います、器用な方は多いので。でもそれだけでは不十分です。
ザコたちにはギャグだけでなく、世界が核の炎に包まれるまでは一般人だったという過去があります。そんな人たちが、なぜ「ヒャッハー」と言うようになったのか。お芝居として荒廃した世界やザコひとりひとりの背景に本気で向き合って考えてほしいと演者さんにお願いしました。彼らが狂っているというベースメントを忘れずに散り際でふざけるんです。
またザコには拳法の紹介などで不自然なほど長い説明セリフもあるのですが、それも驚愕のあまり本心から発したものとして演じてほしいとディレクションしました。その芝居があった上で、視聴者が「こいつ、めっちゃ説明してるな(笑)」と、ツッコミをいれるのはアリです。
ーーここまでお時間ありがとうございます。アニメも13話まで放送されました。最後に音響監督として今後のみどころを教えてください。
小沼 牙親父ですね。当然ケンシロウが勝ちますが、彼の鋼鉄の肉体がいったいどうなってしまうのか、そして断末魔も。彼がどんな音で殴られるのか、どんな声を上げるのか、ぜひ次の放送を楽しみにしてください。

●小沼則義(音響監督)
オーディオ・プランニング ユーでミキサーとしてキャリアを積み独立、フリーを経て現在はビットグルーヴ・プロモーション所属。ミキサーとして『名探偵コナン』『範馬刃牙』などを担当、また『僕の心のヤバイやつ』『あかね噺』『おねがいアイプリ』『天幕のジャードゥーガル』などの音響監督を務める。
(レトロ@長谷部 耕平)

