OVA『銀英伝』ヤン役・富山敬氏の命日 「声優アワード」でも名を冠した賞が
1995年9月25日、声優・俳優の富山敬氏が亡くなりました。日本アニメの黎明期から数え切れないほど多くの重要な役を演じ、没後、2007年の「第1回声優アワード」では特別功労賞を受賞しました。さらに翌年からは名前を冠した「富山敬賞」が設立されています。
富山敬氏とヤン・ウェンリー
9月25日は、1995年に56歳で亡くなられた声優・俳優の富山敬(とみやま・けい)氏の命日です。1963年の『鉄人28号』で声優として活動を始め、その後は『タイガーマスク』の伊達直人や『宇宙戦艦ヤマト』の古代進、『逆転イッパツマン』のイッパツマン(豪速九)、OVA版『銀河英雄伝説』のヤン・ウェンリーなど、日本アニメの黎明期から数え切れないほど多くの重要な役を演じておられました。没してから22年後の2007年には「最も印象に残る」声優を表彰する賞である「第1回声優アワード」で特別功労賞を受賞し、さらに翌年からは名前を冠した「富山敬賞」が設立されています。人格者としても知られており、多くの後輩・同僚たちから慕われ、今なおその死を惜しむ声が絶えません。ライターの早川清一朗さんが、富山氏を追悼します。
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筆者が富山敬氏の逝去を知ったのは、1995年の冬だったと思います。不意に友人から「富山敬さんが亡くなったらしいよ」と聞かされ「えっ! じゃあヤン・ウェンリーどうするの!?」と答えたことを覚えています。
OVA『銀河英雄伝説』の82話「魔術師、還らず」と、ヤンの最後の出番となった86話「八月の新政府」はこの時点ですでに販売されていました。しかしまだモノローグや外伝での出番は残っています。まだこれからもヤンの声を聞けると当たり前のように思っていたのですが、まさか富山氏が逝ってしまうなど、想像もしなかったのです。
このとき筆者は、富山氏とヤンの存在を、思わず重ね合わせてしまいました。おそらく、同じような思いを抱いた方も多いのではないでしょうか。今でもヤンのことを思い出すと富山氏の声で語りかけてくるほど、ふたりの印象はぴたりと合っていたのです。
その後、ヤンの登場する回想シーンはユリアンのモノローグで対処し、外伝は「若かりしころのヤン」として郷田ほづみ氏が声をあてることになりました。その郷田氏は、「『宇宙戦艦ヤマト』を見て声優という職業を認識した。いつも(富山氏が演じた)古代進の真似をしていた」と語り、富山氏が自分のルーツのような方だと明かしています。富山氏が声優業界に与えた影響の大きさを物語るエピソードです。