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『風薫る』意外とメインキャラになってきた団子屋「チュウ」 元ネタ人物は「大人気の食べ物」発明した大物?

朝ドラ『風、薫る』の陽気なご近所さん「チュウ」は、実はみんながよく知っている食べ物を開発したすごい人がモチーフでした。

大関和(りんのモチーフ)と共通点が多い明治の実業家

若林時英さんプロフィール写真
若林時英さんプロフィール写真

 NHK連続テレビ小説『風、薫る』で、主人公の「一ノ瀬りん(演:見上愛)」や「大家直美(演:上坂樹里)」が東京時代に病院で知り合い、退院後も長屋の仲間としてよく顔を合わせているのが、「チュウ」こと「丸山忠蔵(演:若林時英)」です。

 団子屋「田ノ上屋」の見習いとして働いていたチュウは、その後、店を譲り受け、現在は故郷である信州名物の「おやき」など新商品開発に余念がありません。

 ところで、りんと直美にモチーフがいるように、チュウにも脚本家の吉澤智子さんがモチーフにした人物がいます。それが「中村屋」の創業者として知られる明治生まれの実業家、相馬愛蔵です。中村屋は「新宿中村屋」という愛称でも知られる食品メーカーで、クリームパンを日本で初めて販売したほか、名物のカレーライスも多くのファンがいます。

 愛蔵は1870年、チュウと同じ長野県で生まれました。上京して東京専門学校(早稲田大学の前身)に入学する際、疥癬をうつされて帝国大学医科大学附属第一病院(現在の東京大学医学部附属病院)に入院します。

 そのとき愛蔵の看護をしたのが、りんのモチーフである大関和(おおぜき・ちか)でした。和の献身的な看護によって、愛蔵は快癒します。このあたりの流れも、ドラマと同じです。

 在学中にキリスト教に入信していた愛蔵は、布教のほか、禁酒運動や廃娼運動にも携わっています。熱心なクリスチャンだった和とも気が合い、退院後も交流は続きました。

 その後、愛蔵は地元で養蚕を始めたものの、体を壊して再び上京、妻とともにパン屋を開きます。1904年、シュークリームのおいしさに驚いた愛蔵は、あんぱんのあんの代わりにクリームを入れたクリームパンを開発して、日本で初めて発売しました。

 また、社会に貢献したいという思いを強く持っていた愛蔵は、1923年の関東大震災(で電気もガスも水道も止まっているなかでも、原料を入手して被災者のためにパンやまんじゅうを製造し続けています。

 一方、明治の末頃から文化人や芸術家のためのサロンを開いていました。サロンのアトリエには同郷の彫刻家である荻原守衛(碌山)をはじめ、多くの芸術家が集っていました。

 1915年、愛蔵は右翼の大物である頭山満の依頼で、インドの独立運動に身を投じたことでイギリスに追われることになり、日本に亡命してきたラス・ビハリ・ボースを命がけでかくまいます。その後も逃亡生活を続けたボースを献身的に支えたのが、愛蔵の長女・俊子でした。

 俊子は26歳で早逝してしまいますが、その後もボースは中村屋と交流を続け、本場のカリーをメニューとして提案、1927年に発売します。これが新宿中村屋の名物「純印度式カリー」の始まりです。

 同じ年には中国へ旅行に行った際に見かけた饅頭を元に、中華まんを商品化しています。愛蔵は創意工夫が得意なアイディアマンだったのです。

 また、積極的に職を求める小学校を卒業したばかりの少年を雇ったり、若い店員が学問を修めることができるように工場の一角に「研成学院」と名付けた学校を開いたりするなど、店員の育成にも力を入れていました。

 社会的弱者の味方で、後進の育成に力を入れており、キリスト教徒でもあった愛蔵は、和と接点があっただけでなく、共通点が多い人物でした。だからこそ、チュウのモチーフとして選ばれたのでしょう。

 なお、愛蔵は社会運動家で作家の木下尚江と学校の先輩後輩の間柄でした。木下は新潟にいた和と知り合っており、愛蔵を通じて親交を深めて結婚話にまで進みますが、両者のことをよく知る愛蔵が反対して結婚話は流れてしまいました。

 その木下尚江は、「シマケン」こと「島田健次郎(演:佐野晶哉)」のモチーフと推測されています。今後はチュウの出世や社会貢献だけでなく、彼がりんとシマケンの恋模様にもからんでくるのか、要注目です。

参考:新宿中村屋公式サイト、田中ひかる『明治のナイチンゲール 大関和物語』(中央公論新社)

(大山くまお)

【画像】え、「メガネかけたら似てる?」「すげえ店作った人だ」 コチラが「チュウのモチーフ」になった偉人です

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大山くまお

ライター。映画、ドラマ、アニメ、マンガ、プロ野球、名言などについて執筆を行う。中日ドラゴンズファン。著書に『野原ひろしの名言 「クレヨンしんちゃん」に学ぶ幸せの作り方』(双葉文庫)、『名言のクスリ箱 心が折れそうなときに力をくれる言葉200』(SB新書)など。

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