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アニメの声優選びにまつわる、ちょっと危険でドライな話【この業界の片隅で】

「買われた役」をあてがわれた側の重圧と危険

「買われた役」をあてがわれる声優やアーティストは、事務所やレーベルが大きな期待を寄せている人に限られます。この「期待」というのは全く精神論的なものではなく、「投資した金額以上のお金を間違いなく稼いでくれますよね?」という意味での期待です。

 仮に総製作費が3億円で、その10%の金額を出資することで「役を買う」とします。1クールの深夜アニメの場合、放映期間はおよそ3か月ですから、買った役をあてがった声優がその3か月の間に3000万円以上を稼いでくれないことには、赤字になってしまいます。

 もし赤字になった場合、お金を出した側はどう考えて何と言うでしょう? 「今回はダメだったけど次は頑張れよ」と言ってくれるのだとしたら、神様のように優しい人です。「あいつはどうもダメだから、あきらめて他に当たろう」という結論を下されてもおかしくありません。お金や手間をかけるだけ無駄だったとして、二度とチャンスが与えられず飼い殺しにされる危険性も、相当高い確率であるわけです。

 不適切な関係によって役をあてがってもらったと思われないよう、日常生活の振る舞いから発言に至るまで細心の注意を払う努力も求められます。アニメ業界も人間の集まりですから、どこの誰に不適切な関係が存在する……といった噂は常に飛び交っています。噂の真偽はともかく、実際にそんな関係が存在すると判断されただけで、声優やアーティスト本人だけでなく、所属事務所やレーベル自体がキャスティングの選択肢から除外されます。製作委員会で結んだ契約を台無しにされてしまう可能性があるからです。

 これも単なる精神論ではなく、契約書に記載されたリスクです。製作委員会の契約書にも「解除」の条文はもちろんあります。お金を出したどの会社も、他の会社の行動によって損失をこうむったり著しく名誉を傷つけられたりしたら無条件で契約を解除して損害賠償を請求することができる……というものです。

 不適切な関係によるスキャンダルがこれに抵触する可能性は充分にあります。出資金をドブに捨てることになるうえ、裁判まで起こされてしまうという意味です。そしてその裁判には、まず勝つことができないでしょう。

「買われた役」を背負った若い声優やアーティストが、見ていてちょっと可哀そうになるほど死にものぐるいになる姿を、何度も目にしたことがあります。オーディションを経ていようがいまいが、楽な道はないのです。

(おふとん犬)

【画像】アニメ以外でも増えてきた、声優のさまざまな仕事実例(6枚)

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