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『聖闘士星矢』アニメ独自の「アスガルド編」成功の理由。背景に「早すぎるアニメ化」?

アニメオリジナルのキャラやストーリーが多かった『聖闘士星矢』。しかし、その魅力は原作であるマンガとそん色ないものでした。成功の理由を、その歴史から紐解いていきます。

オリジナルキャラも次々と登場

『聖闘士星矢』アニメオリジナルのアスガルド編が収録された、『聖闘士星矢 DVD-BOX 4 キグナスBOX』DVD(バンダイビジュアル)
『聖闘士星矢』アニメオリジナルのアスガルド編が収録された、『聖闘士星矢 DVD-BOX 4 キグナスBOX』DVD(バンダイビジュアル)

 マンガ原作のアニメ作品でたびたび話題にされるのが「原作にないアニメオリジナル展開」です。これにはさまざまな事情がありますが、それが名エピソードを生んだこともありました。今回は例として『聖闘士星矢』のアニメについて振り返ります。

『聖闘士星矢』が「週刊少年ジャンプ」(以下ジャンプ)で連載を開始したのは1986年1・2号のことです。この当時のジャンプは連載作品の6割ほどがアニメ化しているという群雄割拠状態。本作は徐々にそのなかに埋もれ、巻末に近い位置が定番となってしまいます。

 しかし、この事態に起死回生の一打が放たれました。それが、コミックス1巻の発売前という異例の速さでの「アニメ化」です。連載開始から半年程度しか経たない作品でしたが、ジャンプと関係の深い東映動画(現在の東映アニメーション)が、スポンサーとなるバンダイとともにアニメ企画を連載開始直後から動かしていました。

 このアニメ化決定以降、マンガの人気も急上昇します。物語はちょうど「白銀聖闘士編」に入ったところでした。この後の『聖闘士星矢』ブームの到来は説明が要らないほど大きなものです。オモチャの主力商品だった「聖闘士聖衣大系」の大ヒット、男子だけでなく熱狂的な女性ファンの増加など、まさに歴史的な出来事でした。

 ただし、この大ヒットの裏にいくつかの問題もありました。

 その最大の問題が、原作のストックがないこと。異例の早さでアニメ化されたため、区切りの付いているシリーズは暗黒聖闘士編まで、それを通常の速度でアニメ化すると1クール(13話・3か月)程度でマンガに追いついてしまいます。

 もともと、星矢がヨットハウスで暮らし、自身の育った星の子学園によく顔を出すなど、原作を補完する形でオリジナル要素が多かったこともあり、アニメでは早い段階からオリジナルストーリーを導入しました。そして何人かのアニメオリジナルキャラが登場します。

 そのなかでもっとも有名なのは、やはり教皇アーレスでしょう。敵である聖域(サンクチュアリ)を明確な悪と位置付けるために設定したキャラです。アーレス登場以降、聖域では過激なシゴキ訓練の場面が挿入されたり、「アーレス様万歳」と言って世界各地でテロ行為が行われたりと、往年の悪の組織のような描写が加わりました。

 このアーレスは、原作での双子座のサガにあたるわけですが、つじつま合わせとして本来の教皇シオンの弟という設定になっています。本物のアーレスはアテナ降臨前にサガに殺され、そこから入れ替わっていたと小説では語られていました。

 アーレスはオモチャのキャンペーン商品になるなど、人気だけでなく知名度もあったと思います。

【画像】『聖闘士星矢』アニメで魅力を放っていたオリジナルキャラたち (6枚)

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