令和版『日本沈没』は高視聴率をキープ テレビ界のタブーに迫ることは可能か?
札幌が日本の新しい首都に?
第2話の終わりには、田所博士が東山総理の前で関東が沈没する様子をシミュレーションで見せるシーンがありました。「1年以内に関東沈没が始まる」という田所博士の言葉に、東山総理はびっくりです。
ここで気になるのは、令和版の田所博士は「関東沈没」は予言していますが、日本が沈没するとは言っていないということです。昭和版は半年かけて日本が徐々に沈んでいく様子を特撮シーンも交えて描いていましたが、年内で放送が終わる令和版『日本沈没』は、関東沈没だけで済むのでしょうか。
もちろん関東が沈没するだけでも一大事。関東全体で4300万人以上いる人たちを避難させるだけでも、気が遠くなるような大事業です。東山総理は首都機能を札幌に移すことを考えているようですが、皇居の移転はどうなるのでしょうか。歴史ある京都に戻るのか、それとも首都機能とともに札幌に引っ越すのか、気になるところです。
TBSは今後の展開を明かしていませんが、関東が沈んだ後で、日本全体が沈むことになるのかもしれません。その際には、もうひとつ気になるポイントが出てきます。関東以外の各地にある原子力発電所への対応をどうするのかという問題です。
TBSはテレビ業界のタブーに触れられるか
これまで実写化された『日本沈没』では、平成時代のリメイク版映画も含め、原発問題には触れていません。Netflixで配信されたアニメシリーズ『日本沈没2020』では、メインキャラクターであるカイトが「原発が煙を上げているのを見た。雨は危険だ」と台詞で触れるだけにとどめていました。
2011年の東日本大震災の際に起きた福島第一原発事故の生々しい惨状が記憶に残る現在に大災害をテーマにした作品を作る以上、原発問題は避けられないポイントでしょう。主人公・天海の実家がある愛媛県にも、伊方原発があります。テレビ局にとって、電力会社は大口のスポンサーです。それゆえに、テレビ業界ではタブー視されている原発問題をTBSがどう扱うのかにも注目です。
また、仲村トオルさん演じる東山総理にこれから見せ場が待っているのかどうかも気になるところです。樋口真嗣監督が撮ったリメイク版映画『日本沈没』の山本総理(石坂浩二)は、日本国民の海外避難を諸外国に理解してもらおうと旅立った途上で消息を絶ちました。庵野秀明監督の『シン・ゴジラ』の大河内総理(大杉漣)も、中盤で悲劇的な最期を迎えています。
令和の新総理には、1973年版の映画『日本沈没』で総理役を演じた丹波哲郎さんばりの熱演シーンが待っていることを期待したいと思います。
(長野辰次)