時には無惨より怖い、『鬼滅の刃』の「お館様」! ゾクッとさせられるシーン5選
天元の心の支えにもなった「お館様」
●音柱・宇髄天元の心に寄り添った言葉
元忍の音柱・宇髄天元は、頭領である父のもとで個人の意思や命、心をまったく尊重されずに厳しく育てられました。命を賭けて任務を遂行するのは忍の世界では当然のことで、人の命の重さや個人の意思については考える必要もありません。幼い頃から、その価値観のなかで育った天元や妻たちにとって、そこからドロップアウトすることは、それまでの自分を完全否定することであり、先行きには不安しかなかったことでしょう。
しかし、そんな彼らを丸ごと受け入れたのが耀哉です。「つらいね 天元 君の選んだ道は」と耀哉が言ったとき、天元はハッとした表情をします。そこまで人の心を深く理解してくれる耀哉のはかりしれない大きさに、天元もゾクッとしたのではないでしょうか。
耀哉は23歳、『鬼滅の刃 公式ファンブック 鬼殺隊見聞録』を見ると天元も同じく23歳と書かれています。耀哉は4歳で父を亡くしてから、長きにわたって鬼殺隊の当主を務めてきました。悲しみと苦しみに満ち、それでも前を向いて歩んできた日々があるからこそ、天元の気持ちを深く理解したのでしょう。
●風柱・不死川実美を包み込んだ優しさ
風柱・不死川実弥は、鬼にされた母を殺したことで、唯一生き残った弟の玄弥とも不仲になり、人一倍強い鬼への憎悪を抱いていました。家を出た後、自殺行為とも思える方法で鬼狩りをしていた実弥ですが、鬼殺隊の隊士、粂野匡近(くめの・まさちか)と出会い、鬼殺隊に入ります。
ともに戦い兄のように慕った粂野を亡くし、自分だけが柱になったことで、実弥は当初、耀哉を憎んでいました。そして、実弥は柱になって初めての柱合会議の場で、耀哉に対して罵声を浴びせます。しかし、耀哉は怒ることもなく実弥の言葉に耳を傾け、自らの肉体的な弱さを認めて素直に謝り、当主としての自分の思いを語るのでした。ここでは強いだけではない、人の心に寄り添う耀哉のリーダーたる姿にゾクッとします。
その謙虚で、誠実な物言い。実弥に「親が我が子に向ける溢れるような慈しみに 優しく頬をくるまれる気がした」と母親を思い出させる温かさ。母や弟たち、そして粂野の死、玄弥との別れなどで心に大きな傷を負っていた実弥は、嘘偽りのない耀哉の温かい言葉に心のわだかまりが溶けていくのを感じたのでしょう。以降、耀哉を尊敬し、心から慕うようになりました。
●最終決戦を前にした最後の言葉に……ゾクッが止まらない
無惨との最終決戦がまさに始まらんとする場面で、耀哉は無惨本人と対峙します。無惨から「醜い」「すでに屍の匂いがする」などと言われる耀哉は、全身に包帯を巻き、目も見えず、生きていることすら奇跡という状態でした。しかし、彼は堂々と「永遠というのは人の想いだ 人の想いこそが永遠であり 不滅なんだよ」と、包帯で顔のほとんどが隠れながらも微笑んで告げ、自らの手で最終決戦の火蓋を切って落としました。
鬼の始祖として極悪非道の限りをつくしてきた無惨にすら、「人間にあてる物差しでは測れない」とその度量を認めさせ、「あの男は完全に常軌を逸している」とまで言わしめた耀哉。その思いに、そして言葉のひとつひとつにゾクゾクが止まりません。
あなたは、お館様のどんな言動にゾクッとしましたか?
(山田晃子)
※禰豆子の「禰」は「ネ」+「爾」が正しい表記