2次元作品は陰謀論をどう描いてきたか ゲームの悪役にぴったりな世界を支配する組織…
陰謀論の王道「フリーメイソン」

●歴史の一部としての陰謀論 『フロム・ヘル』
陰謀論系都市伝説の人気者・フリーメイソンはいろいろなところに節操なく名前を出しています。なかでも、世界一有名な殺人鬼・切り裂きジャックを題材にしたイギリス製コミック『フロム・ヘル』では、「連続殺人の裏にフリーメイソンと王室を巻き込んだ巨大な陰謀が渦巻いていた」という仮説が採用されています。
『ウォッチメン』でも知られるアラン・ムーアによる『フロム・ヘル』はセリフの量がとにかく多く、日本の漫画と比べるとコマ割りが平板で正直読みづらいです。歴史や哲学の話が延々と続くパートもあるので、マンガだと思って軽い気持ちで読むと脱落する可能性があります。
同作にはオカルトな要素(主に魔術)も含まれていますが、ここで描かれているのは思想史としての魔術であり、歴史の一部としての陰謀論です。筆者の大学院時代の指導教授(英文学者)が書評で『フロム・ヘル』を取り上げていましたが、わざわざ教授が取り上げた理由が読んで改めてわかりました。取っつきやすい代物ではありませんが、陰謀論を文学に昇華させた稀有な作品なので、興味があればぜひ挑戦してみてください。
『HELLSING』や『ドリフターズ』の作者として知られる平野耕太先生が、22年3月にTwitterでこのような発言を残しています。
「陰謀論に染まらないためにも人間は思春期にしっかりと中2病に罹患して体内に抗体を作っておかないといけないんです」
確かに、娯楽として陰謀論に接することができないと、真に受けて信じてしまう危険性もあります。陰謀論にはフィクションのなかでたっぷりと触れておき、体内に抗体を作っておきたいところです。
(ニコ・トスカーニ)