型破りな富野監督が描いた「ダブルヒロイン」の元祖とは? 『ザブングル』での先見の明
2022年で放送から40年を迎えたロボットアニメ『戦闘メカ ザブングル』。放送当時はロボットアニメの常識を次々に打ち壊して「パターン破り」と言われました。その変革は作品の華であるヒロインにも及んだのです。
パターン破りの『ザブングル』らしいダブルヒロインの描き方

今から40年前に放送されたロボットアニメ『戦闘メカ ザブングル』。当時は画期的作品として、さまざまな新要素でそれまでの常識を打ち壊していき「パターン破りのザブングル」として人気を博した作品でした。
主人公メカ「ザブングル」が最初から2台存在。そのザブングルを途中で乗り換えて2号ロボ「ウォーカー・ギャリア」が登場。母艦である「アイアン・ギアー」がロボットに変形、その同系艦が敵として登場して戦う……といった部分、主にメカニックのパターン破りが有名です。
もちろんキャラクター面でも主人公であるジロン・アモスが、それまでの主人公の定番だった端正ある顔つきでなく、まるでコンパスで描いたかのような丸顔の三枚目。作中でも「ドマンジュウ」「メロン・アモス」などと罵られていました。
また、ヒロインのひとりであるエルチ・カーゴが番組中盤で敵にさらわれて洗脳され、以降は敵とした戦うというのも当時のアニメとしては異例の展開だと言われています。
しかし、これらは『ザブングル』の後にロボットアニメでは定番化したものもあり、本作が以降の作品のスタンダードとなったパターンの数々でもありました。さらに上記はよく言われていることですが、それ以外にもそうではないか? と筆者が思うことがあります。それが本格的な「ダブルヒロイン」の登用でした。
本作では主人公のジロンを巡って、エルチとラグ・ウラロというダブルヒロインが三角関係になっている構図が描かれていました。これまでもそういったシチュエーションはなかったわけではありませんが、メインヒロインとゲストという関係がほとんどで、最初から最後までストーリーの流れに沿って描かれるのは珍しいことです。
もっとも本作の総監督である富野由悠季監督は、それまでの作品を見ると一目瞭然ですが、ロボットアニメで定番だった紅一点を否定するかのごとく、ヒロインは必ず複数人用意していました。
最初の監督(クレジット表記はチーフ・ディレクター)作品である『勇者ライディーン』では桜野マリと明日香麗。日本サンライズ(現在のサンライズ)オリジナル作品第1号である『無敵超人ザンボット3』では一見するとヒロインは神北恵子だけに思われますが、主人公に寄り添う形で登場しているブスペアのアキとミチは、ストーリーの展開を見ていけばヒロイン以外の何ものでもありません。
簡単に分類すると、メカに乗り込んで戦う女性が恵子、人間爆弾という悲劇にあう女性がアキ、そして主人公が帰ってくる場所となる女性がミチ。そう整理すると、それまでのヒロイン役に集中していた役割を分散していたことが読み取れます。
そういった点で富野監督作品では最初から複数のヒロインが登場して、それぞれの立場で女性陣が作品に華を添えていました。振り返ってみれば『ザブングル』で今さらダブルヒロインもないだろうと思う人もいるでしょうが、本作でのエルチとラグの活躍を見ると、それまでとはまた違ったヒロイン像が描かれていたことが分かります。



