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電子コミックが地方を救う!? 宮崎県日南市のIT企業が担う地域おこし

若者の流出が続いて過疎化が進む地域を、コミックなどの"電子書籍"が救うかもしれません。IT系企業のサテライトオフィスが多く設置されている宮崎県日南市の取り組みをご紹介します。

電子書籍制作と研究開発を実施し、地域で雇用を促進

 漫画アプリ「マンガトリガー」を運営する、株式会社ナンバーナインがこのほど、宮崎県日南市に「日南デジタル漫画ラボ」を設立すると発表しました。「マンガでひとびとの人生を豊かにする」を目標に、マンガ制作を支えるクラウドファンディングを実施するなど、漫画家支援を中心とした事業と電子コミックビジネスが好評な同社。今回設立する「日南デジタル漫画ラボ」では、電子コミックの制作に加え、短期間で高品質の電子書籍制作を行うための研究開発なども行う予定です。

 インプレス総合研究所が発行した「電子書籍ビジネス調査報告書2018」によれば、電子書籍の市場規模はおよそ2241億円にのぼり、売上のほとんどをマンガが占めています。また、最近では地図アプリと連動し、歩いてマンガを探して読む「マワシヨミジャンプ」や、毎晩18時から翌6時までの時間限定の「夜サンデー」といった、これまでになかった新しいコンセプトのマンガアプリやWebマンガサービスが登場しています。

 また、Webマンガなどから単行本化され、さらにアニメ化へと展開される作品も多数登場するなど、電子コミックの市場は盛り上がりを見せています。

日南市で行われた調印式の様子(画像:株式会社ナンバーナイン)
日南市で行われた調印式の様子(画像:株式会社ナンバーナイン)

 同施設が設立される宮崎県日南市は、地域創生を積極的に行ってきました。日南市の油津(あぶらつ)商店街は、かつてシャッターが閉まった店舗が並ぶ時期がありましたが、2016年に全国333人のなかから選ばれた「地域再生請負人」の活躍によって活気ある姿を取り戻し、経済産業省が主催する「はばたく商店街30」に選定されました。現在の油津商店街ではスイーツや喫茶店といった若者に人気の店舗がオープンし、週末には商店街全体でのイベントが催され、多くの人で賑わっています。

13社220人の若い世代が働く

 そうした油津商店街の空きテナントを利用して、東京をはじめ全国各地のIT企業のオフィスが次々と設置されています。2016年4月、新宿に本社を構えるポート株式会社がサテライトオフィスを設置したことをきっかけに、現在まで13社がオフィスを置いています。株式会社ナンバーナインは14社目になります。

 このようなIT分野の企業進出は、地方にどのように作用するのでしょうか。日南市の担当者に話を聞きました。

ーーIT企業のサテライトオフィス設置の経緯を教えてください。

 日南市の若い世代の希望職種としては「事務職」が圧倒的に多いのですが、市内ではなかなかそういった求人がありませんでした。若い世代が市外に流出してしまうことは、市にとって大きな問題です。そこで、若い世代からの人気が高いIT系企業のサテライトオフィスを設置し、流出防止と雇用を生み出すことを目的として始まりました。

ーーどのような企業がオフィスを設置しているのでしょうか?

 今回の株式会社ナンバーナインさんが扱う電子書籍のほか、Web編集、Web広告といった分野の企業がオフィスを構えています。ほかには、コールセンターなどもあります。顧客の引っ張り合いを防ぐため、各企業の事業内容が被らないように注意を払っています。

ーー市内からはどのような反応がありましたか?

 求人に多くの応募がありました。現在入居している13社あわせて220名が働いています。2019年4月にも新たな企業が加わることが決まっており、さらなる雇用の拡大を目指しています。

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 今回設置が発表された「日南デジタル漫画ラボ」は、電子コミック市場の盛り上がりを背景に、地域に雇用がもたらされた事例のひとつといえます。同ラボの活動によって日南で就職する若い世代が増え、運営母体の株式会社ナンバーナインの業績にも貢献する結果を残せば、日南市のまちづくりは今後ますます注目を集めることになるでしょう。

(マグミクス編集部)