「シャアはニュータイプのなり損ない」はホント? 富野監督いわく「覚醒の条件」とは
『Zガンダム』では「いい人」になってしまったシャア

終戦後、シャアはザビ家の遺児ミネバを守って、地球連邦に投降しなかったジオンの残党と合流し、小惑星アクシズに潜伏します。そこでハマーンと出会うのですが、アクシズの内輪もめを嫌悪し、地球圏の偵察と称してアクシズを離れます。
地球圏ではクワトロ・バジーナという偽名を名乗って反地球連邦組織エゥーゴに所属し、カミーユらと共に地球連邦を私物化する軍閥「ティターンズ」と戦うことになるのですが、指導者のブレックスが暗殺されると「シャア・アズナブル」としてエゥーゴを託されてしまいます。アクシズでのしがらみを嫌って地球圏に来たのに、さらに重い役割を担うことに。
そしてティターンズとの戦いの中、世論を味方につけるためダカールの連邦議会を占拠して全世界に向けてテレビ演説を行った際、自身をジオン・ズム・ダイクンの遺児であるキャスバル・レム・ダイクンであると名乗りました。
これらは自ら必要に迫られて選択したことですが、果たしてシャアはジオンの赤い彗星でしょうか、それともエゥーゴのエースパイロット「クワトロ大尉」でしょうか、あるいは腐敗した地球連邦を正そうと戦う革命家の息子キャスバルでしょうか。
復讐に生きていた頃と違って『Zガンダム』のシャアには大きな目標がなく、周囲にさまざまな役割を期待されながら戦っていました。多くの役割を場当たり的に受けざるをえなくなった結果、シャアは状況に流されながら戦う主体性のない人物になってしまったのです。
シャア自身も自分のあり方がブレていると自覚しており、それが迷いとなって本来の実力を発揮できず、シロッコたちに圧倒されてしまったと言えるでしょう。
シロッコはそんなシャアの生きざまを見て、新しい時代を拓く人物にふさわしくないと失望したのです。
●迷いを捨てれば最強のシャア
1985年に発行されたアニメ雑誌「アニメック」に掲載された富野監督インタビューによれば「迷いを捨てたシャアはとほうもなく強い」「アムロなんか何も知る前に殺されてしまう」とのことです。
しかし地球人類を粛清することを決意し、アクシズ落としを敢行しても迷いを捨てられないのがシャアという人物です。アムロと対等の戦いをするためにサイコフレームの技術を流出させるなど、あえて非合理的な判断をしています。
明確な目標や勝利のために全てを捨てるような合理性を最後まで持たず、自己矛盾や割り切れなさを抱えながら戦ったシャア。生い立ちの複雑さや気高い理想から来る深みのある人間性は数十年を経て多くのファンを魅了しています。
(レトロ@長谷部 耕平)




