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『ガンダム』「連邦よりジオンのほうが正義」 ファンでも意見割れる「どっちが悪い」論争

反乱を引き起こすほどの地球連邦の圧政とは?

ジオンの屈強な軍人たちは多くのファンを惹きつけた。画像は『機動戦士ガンダム ジオン兵列伝ぴあ』(ぴあ)
ジオンの屈強な軍人たちは多くのファンを惹きつけた。画像は『機動戦士ガンダム ジオン兵列伝ぴあ』(ぴあ)

 アニメ『機動戦士ガンダム』において地球連邦の圧政や腐敗がどれほどのものか、具体的に描かれたことはほぼ無いと思われます。キャラクターが地球連邦のひどさを語ることで間接的に描かれるケースがほとんどです。

 しかしその後の派生作品においては、半ば強制的に移民となって宇宙での過酷な生活に耐えなければならなかったにもかかわらず、高額な移住費用を負担させられ、孫の代まで返済し続けなくてはならないなど具体的な内容が描写されています。

 また複雑化した官僚組織の腐敗については、どこから手を付けたらよいか分からないほどで、『閃光のハサウェイ』では政府高官を狙ったテロによる世直しの行方が描かれています。

●戦後の連邦はジオンと同じことをやり返す

 一年戦争で地球連邦が勝利を治めた後も宇宙移民との対立は収まりません。地球連邦内にはジオン残党に対抗する特殊部隊「ティターンズ」が結成され軍閥化します。そして毒ガスやコロニーレーザーを使い、かつてジオンが行ったのと同じ非道を繰り返しました。

 戦前・戦後にまで目を向けて連邦とジオンの確執について解説しましたが、両陣営とも相当の残虐行為を行っていることは確かです。どちらが悪いか悪事の質・量で判定するのは無益ですが、あえて被害者数で比べるならやはりジオンによる55億人という死者数は圧倒的で比べ物になりません。

●戦争の原因は共感能力の欠如?

 本当の問題は「地球に住む豊かな人は宇宙移民の心がわからない」ことにあるのかもしれません。もちろん地球にも多くの貧しい人がいるのは確かですが、問題はごく限られた地球のエリートたちです。

『ガンダム』で描かれてきた地球連邦の高官の多くに見られるのが、柔軟性と共感能力の著しい欠如です。これがブライト・ノアに代表される地球連邦の「現場の人々」の葛藤につながっています。

 豊かさに由来する無自覚なエリート意識が人々の反感をかい、劣等感を煽っているのです。そして「豊かさに無自覚なごく少数の人々」と「生きていくのに奮闘する多くの人々」の対立が指導者を得て「地球連邦vsジオン」の戦争として具体化したのではないでしょうか?

 地球と宇宙の対立ではなく、富をめぐる対立の方が一年戦争の本質に近いと思われます。ジオンと連邦の確執は人類の歴史を反映しているようです。

(レトロ@長谷部 耕平)

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