強敵「シン」と手下たちの功績は絶大? 読者を『北斗の拳』世界に引き込んだ悪役たち
シン――ザコとは格が違いすぎる最初の「強敵(とも)」

KING軍の頂点に君臨する男、KINGことシンは、ただ暴れて弱いものをなぶり殺すだけの部下たちとはまったく異なる人物でした。
まず、ルックスがいい。シンは『北斗の拳』始まって以来の美形悪役です。最初に登場したときの美女をはべらせた全裸のカットは衝撃的でした。次に、出自がいい。南斗六聖拳のひとりであるシンによって、『北斗の拳』の壮大な物語の縦軸となる、南斗聖拳と北斗神拳の対立概念がもたらされました。
当然、実力もあります。シンはケンシロウの胸に7つの傷をつけた男です。拳法の実力だけでなく、愛した女のために都市をひとつ作ってしまうほどの豪腕の持ち主でした。さらに、シンには強い信念がありました。それは強い男には「欲望」と「執念」が必要だというものです。かつて気持ちが脆弱だったケンシロウは、シンの強い執念に敗北しました。
そして、最大のポイントが「愛」です。ケンシロウとの因縁も、もとはといえばケンシロウの婚約者、ユリアへの歪んだ純愛が原因でした。ケンシロウを倒した後は、ユリアの気持ちを自分に向けようと涙ぐましい努力(ただし見当違い)をしていたのです。
「執念」を学んで変貌したケンシロウとの激闘を繰り広げた末、シンは「北斗十字斬」で敗北します。最後は「おれがほしかったものはたったひとつ ユリアだ!!」と叫び、ユリアのあとを追うように城から飛び降りて絶命しました。ケンシロウはシンの墓を作って埋葬してやります。疑問を抱いたバットには「同じ女を愛した男だから」と答えました。

後にシンは、実は過去においてケンシロウとは良き友人だったものの、ジャギにそそのかされてケンシロウを襲ったこと、ユリアが生きていたと知っていたにもかかわらず、ラオウからユリアを守るためにユリア殺しの汚名を被っていたことなどが明かされます。これほどまでにイメージが移り変わっていった登場人物も他にありません。
ケンシロウにとって最初の「強敵(とも)」だったシンは、信念を持ち、自分の物語を生き、愛に殉じた男でした。『北斗の拳』がただの血なまぐさいバトルマンガではなく、壮大な大河ロマンだと予感させるのに十分な登場人物だったのです。
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2023年9月13日(水)、『北斗の拳』40周年を記念して、コアミックスよりコミックスの『新装版』が刊行開始になりました。初回は第1巻と第2巻、9月20日(水)に第3巻と第4巻が発売され、以降毎月20日に2冊ずつ発売されます。なお各巻の収録話は10年前に刊行された「究極版」と同じです。
またコアミックスのマンガ配信サイト「WEBゼノン編集部」の『金曜ドラマ 北斗の拳』にて、その刊行にあわせ、第2巻までの見どころのひとつである第2話「怒り天を衝く時!の巻」と第8話「執念の炎の巻」を、2023年9月13日(水)0時から同年9月26日(火)23時59分までの期間、無料で公開しています。さらに13日(水)正午より40時間限定で、「シン編」が10話まで無料公開予定です。
■WEBゼノン編集部『金曜ドラマ 北斗の拳』
https://comic-zenon.com/episode/3269754496537758766
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(大山くまお)


