TVアニメ『SLAM DUNK』放送から30年 ファン待望の「山王戦」映像化が長い道のりになったワケ
アニメでの完結を望んだのはファンだけではなかった

原作マンガ最終回は異例の巻頭カラーだったことから、本作の人気がまだ衰えていなかったことがわかります。この偉業は「ジャンプ」では『リングにかけろ』、『ドラゴンボール』に次いで本作が史上3度目の作品となりました。
そういった事情から、本作のアニメ化されなかった全国大会以降のエピソードは、比較的早い段階から制作の東映動画(現在の東映アニメーション)によって企画されていたそうです。しかし、諸般の事情から実現には至っていません。
結果的に、それが2022年に公開された劇場版『THE FIRST SLAM DUNK』となるわけですが、そこに至るまでは平たんな道ではなかったようです。何度かアニメ化の企画を打診したものの、原作者である井上雄彦先生のOKが出なかったからです。
しかし幾度も企画が送られてくるなかで、ようやく自分が考えるものに近いものが出てきたことで井上先生が了承し、新作のアニメ制作に結び付きました。そういったこだわりがあったゆえに、井上先生が原作だけでなく脚本と監督を兼務することになったのでしょう。
しかし、どうして東映アニメーションは『SLAM DUNK』の続編にここまでこだわったのでしょうか。もちろん何度となくファンから全国大会のアニメ化の要望があったことが一因です。しかし、もっと単純な理由もありました。それは社内に『SLAM DUNK』のファンが少なからず存在していたことです。
東映アニメーション社内の方と雑談すると、『SLAM DUNK』が好きで入社したという人が何人かいました。つまり内部に熱狂的なファンがいたことから、社内の熱量がさめることなく、劇場版として復活する要因となったのかもしれません。
もちろんそれだけが理由ではないでしょうが、他のアニメ製作会社にも好きな作品を制作したからという理由で入社している人は少なくありません。昨今では数十年ぶりの復活を遂げるアニメ作品が多くありますが、それは人気作品だったからという理由だけでなく、作り手が好きだった作品という点もあるのでしょう。
こういった作り手側と受け手側の熱量の維持が26年越しで念願の山王戦のアニメ化を実現したのかもしれません。この『THE FIRST SLAM DUNK』の興行収入は国内だけで150億円を超え、現在、日本歴代興行収入7位に位置しています。
この数字だけ見れば、作品の完結を望んでいたファンは多くいたことがわかるでしょう。いまだに『SLAM DUNK』を熱狂的に支持するファンの思いが作品を動かしたのかもしれません。
(加々美利治)