初代『ドラクエ』の思い出 「ゆうべはお楽しみでしたね」に少年は興味を引かれ…
初代『ドラゴンクエスト』は、モンスターと戦い経験値とお金を手に入れ、レベルを上げて装備を強化、冒険の末にラスボスを倒すというRPGの存在を日本に知らしめました。さまざまなハードに移植され、プレイされ続けている『ドラクエ1』の魅力を語ります。
RPGを知らなかった少年が、『ドラクエ』と出会う
1986年に発売された『ドラゴンクエスト(以下、ドラクエ1)』は、モンスターと戦い経験値とお金を手に入れ、レベルを上げて装備を強化。冒険の末にラスボスを倒すという、ロールプレイングゲーム(以下、RPG)というジャンルの基礎知識を日本に知らしめました。その後もさまざまなハードに移植され、2019年9月27日には、ニンテンドーSwitch版が発売。当時『ドラクエ1』にハマり、その後多くのRPGをクリアしてきたライターの早川清一朗さんが当時の興奮を語ります。
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64キロバイト。これがファミコン版『ドラクエ1』に使われていたメモリの容量です。64メガでも64ギガでもありません。たったの64キロバイトに収められたデータが、その後の日本のコンピュータRPGを席巻する巨大な力となったのです。
とはいえ、当時の筆者が発売日に『ドラクエ1』を買いに走ったのかと言えば、そうではありませんでした。
「週刊少年ジャンプ」で特集が組まれていたため存在は知っていましたが、この頃の筆者はRPGについて全く知識がなく、いまひとつ興味が持てなかったのです。当時、ファミコンのゲームといえばシューティングゲームやアクションゲームが主流で、それらを除けば、『ポートピア連続殺人事件』などのアドベンチャーゲームや、麻雀や五目並べといったテーブルゲームくらいしかありませんでした。
そこにポンと「モンスターと戦え!」「お姫様を救え!」「竜王を倒せ!」と言われても、ピンと来ないというか、自分が何をすればいいのか分からなかった……ゲームで冒険に出るという概念を、まだ持っていなかったのです。
今であれば、PC用ゲームとして『ウィザードリィ』『ウルティマ』『ザ・ブラックオニキス』などの名作が同時期に発売されていたことは分かります。しかし当時の筆者は小学生。高価なPCには興味もなく、当然、ゲームの情報も知りませんでした。
そして何より重要だったのが5月27日という発売日です。お年玉などとうの昔に消えてなくなり、親にねだるしかない状況。何かよく分からないものを無理にねだる気も起こらず、淡々と時は過ぎていったのです。
そんな状況に変化が訪れたのは、夏休みの少し前あたりだったでしょうか。友達のなかに『ドラクエ1』をプレイする子がちらほらと出始め、彼らはみな一様に「すごく面白い!」と絶賛していたのです。
特に気になったのが、「お姫さまを助けて宿屋に行くと、宿屋の主人が”ゆうべはおたのしみでしたね”って言うんだよ」という言葉でした。当時の自分には何のことだかさっぱり分かりませんでしたが妙に気になり、『ドラクエ1』への興味が芽生え始めたのです。