『北斗の拳』修羅の国で明かされた漢たちの血脈を整理 なぜ「血」は必要とされたのか
修羅の国編では、これまで語られなかった北斗神拳誕生の経緯や伝承者にまつわる歴史が明らかになりました。なぜ修羅の国編で「血」の設定が明かされたのでしょうか。その理由について考えてみます。
「あのラオウに兄がいた」という衝撃の展開

『北斗の拳』にて、「天帝編」の後に始まった「修羅の国編」では、北斗神拳の真実と継承者の血脈が新たなテーマになりました。気になるのは複雑に絡み合った北斗の漢(おとこ)たちの関係性です。以下、強大な力を秘めた拳法の「継承」と「血脈」について考えてみました。
●「北斗神拳を生み出した方」の北斗宗家の血は特別
一子相伝の暗殺拳である北斗神拳には、原型となる拳法があります。それが「北斗宗家の拳」です。2000年前、北斗宗家は男児に恵まれず、その血を引くのは「オウカ」と「シュメ」の姉妹のみでした。しかし皮肉なことに、ふたりは同じ日にふたりの男児を産み落とします。それが「リュウオウ」と「シュケン」です。
北斗宗家の高僧たちは、ふたりの男児を同等に育てるとふたりの覇者による乱世を招くと危惧し、なんと生まれたばかりのリュウオウとシュケンを降天台に置き去り、飢えた狼に晒すこととしました。生き残った赤子を継承者にするためです。
この試練を告げられた夜、シュメは降天台に行きシュケンだけを連れ去りました。病で余命僅かだったシュメは、我が子だけでも生きていて欲しかったのです。置き去りにされた姉オウカの息子リュウオウは狼に襲われますが、この動きを知った高僧たちによって守られました。
シュメが我が子を思う気持ちを知ったオウカは高僧たちに「伝承者を妹の息子であるシュケンに譲る」と命をかけた願いを告げ、崖から身を投じました。こうしてシュケンはシュメとオウカというふたりの母の深い愛を背負って北斗宗家を継承し、北斗神拳を生み出したのです。その北斗神拳創始者シュケンの血を引くのが、「ケンシロウ」とその実兄である「ヒョウ」です。

身を投げたオウカの息子であるリュウオウの、その後については語られていません。しかし「母に捨てられしリュウオウの子孫は愛を失い愛に彷徨しよう 誰かが愛を説かねばならぬ それが北斗神拳伝承者の宿命と知れ」という言葉がケンシロウに伝わっており、作中では間接的に「カイオウ」がリュウオウの血を継ぐものであると示唆されています。つまりカイオウの実弟である「ラオウ」や「トキ」もまた、本来的には決して北斗神拳伝承者に選ばれることのないリュウオウの子孫なのです。
元をたどれば、リュウオウとその子孫もシュケンと同じ北斗の血族ですが、北斗七星に仕え、北斗七星のために死す惑星としての役割を担う格下の立場に置かれています。いくら実力があっても従者であり、屑星に過ぎないとまでいわれるほどです。この血の宿命による歪みが、カイオウを憎悪の塊へと育ててしまいました。