『Zガンダム』正ヒロイン「ファ」をもっとすこれ! なぜフォウより影が薄いのか?
家庭的なファは安全牌?

こうして「強烈な女性」が多数、登場するなか、カミーユたちの母艦「アーガマ」で子供をお風呂に入れたり、カミーユを世話したりするファは、いわゆる「家庭的な」立ち位置になってしまったように思えます。ファもまたモビルスーツ「メタス」で戦場に出てカミーユと一緒に戦いましたが、感情的に強く揺さぶるようなことのないまま、自然と恋人になっていったからです。ファとカミーユの間にドラマチックな男女の葛藤がなかったことは、ファの印象を薄めてしまった原因だと思われます。
ファの立ち位置を前作『機動戦士ガンダム』で例えるなら、アムロに対する「フラウ・ボウ」がしっくり来ます。フラウもまた、アムロの幼馴染で世話好きな性格でした。もしかしたらカミーユとファの関係は、「もしもフラウがアムロと添い遂げたら」という変奏曲なのかもしれません。
ミステリアスで影がある危なっかしい美女よりも、家庭的で精神が安定したファのほうが好ましいと思う人は一定数、いることでしょう。
●2種類の異なる結末
『Z』には2つの異なるエンディングがあります。ひとつは1985年に放送されたTVアニメ『機動戦士Zガンダム』、もうひとつは20年の時を経て、2005年から2006年にかけて公開された映画三部作『機動戦士Zガンダム A New Translation』です。
TVアニメの『Z』では、カミーユはパプテマス・シロッコとの戦いで精神を崩壊させてしまいます。シロッコを討った後、Zガンダムのコクピット内でカミーユが口にした「大きな星が点いたり消えたりしている。アハハ、大きい、彗星かな。イヤ、違う、違うな。彗星はもっとバーッて動くもんな」「暑っ苦しいなここ。出られないのかな。おーい、出し下さいよ、ねぇ」という幼児退行したかのようなセリフは当時のファンを驚かせ、伝説となりました。そしてファは1986年に放送された続編『機動戦士ZZガンダム』において、看護師として心を失ったカミーユの世話をする姿が描かれます。
この『Z』のエンディングは、同じ富野監督による前番組『エルガイム』とよく似ています。主人公の「ダバ・マイロード」は、ヒロインの「ファンネリア・アム」と「ガウ・ハ・レッシィ」のどちらも選ばず、精神崩壊した義妹「クワサン・オリビー」の世話をしながら故郷で暮らすことを選びます。反乱を成功させたにも関わらず歴史の表舞台から身を引いたのです。クワサンとカミーユの立ち位置が入れ替わったのがTVアニメ版『Z』のほろ苦いエンディングではないでしょうか。
カミーユは前述のように『ZZ』にも登場していますが、心を取り戻せていませんでした。車椅子から立ち上がるなどして回復への希望を残すに留まっています。
しかし新たに制作された劇場用映画三部作は違います。カミーユは精神を崩壊させず、無事に帰還することが出来ました。ファとカミーユは抱きしめあって理想的なエンディングを迎えます。けなげで献身的なファは、20年の時を経て作られた『機動戦士ZガンダムIII A New Translation -星の鼓動は愛-』でようやく報われたのです。
(レトロ@長谷部 耕平)









