40年前の今日『宇宙刑事シャリバン』が最終回 「ギャバン」との共演に納得できた理由とは
強敵だからではない? ふたりの宇宙刑事の共闘が必要だったワケ
ちなみに、最終回でのヒーロー共闘は他の作品でも見かけることがあります。定番の盛り上げ展開でしょう。しかし、本作には絶対的にふたりのヒーローが必要でした。その理由をご説明していきましょう。
本作のラスボスである「魔王サイコ」は、当初の予定では最終回前に倒されるはずでした。それは番組途中から加わった強敵、死霊界から来た「軍師レイダー」により倒され、その結果、マドーは乗っ取られてしまうという展開だったからです。
実はこのレイダーの造反、次回作への伏線となる予定でした。次回作の主人公の妹がレイダーの呪いにかかるという流れだったのです。ところが、この流れは変更されて次回作『宇宙刑事シャイダー』は、世界観は継承しても前作からの設定の引継ぎをしない方針となりました。
これによりレイダーのクーデターは成功する必要がなくなったわけです。そこで新たに考えられたのが魔王サイコの分身である「戦士サイコラー」の存在でした。このサイコラーの人間体である「海坊主」は、番組初期から登場していましたが、敵か味方かすら考えていなかったそうです。
そしてサイコラーの存在がレイダーのクーデターを阻止するカギでした。レイダーの姦計で一度は死んだサイコでしたが、サイコラーによって命を分け与えられて復活を果たします。そしてレイダーを抹殺しました。サイコとサイコラーは命を分け与えた存在で、片方が倒れても片方が命を与えることで復活を果たすことができたのです。
つまりサイコとサイコラーは「同時に撃つ」必要がある強敵でした。この絶妙な設定がギャバンとシャリバンの共闘に必要性をもたらしたわけです。敵が強大だからではなく、ふたりのヒーローがいなければ倒すことができない存在。これほどまでにヒーローの共闘を正当化する設定はそうありません。
そして最終回の名場面は今でも脳裏に焼き付いています。サイコラーの前に立った烈と電。そして互いを見てからの「蒸着!」、「赤射!」の声と共に空中で回転しながら交差して降り立つふたりの宇宙刑事。ギャバンとシャリバン。そこから呼応するかのようにお互いの必殺技と超兵器のオンパレードが続きます。
最終回までじらされた共演でしたが、そのかいもあって興奮し通しの30分でした。今思えばこの最終回の興奮のため、製作陣もふたりの共演は控えていたのでしょう。その思いが爆発したアクションシーンでした。むろん、それ以外にも作品の完結に相応しい設定回収を見せた、最高の締めくくりだったと思います。
もっとも個人的に残念に思ったのは、1年間パートナーを務めたリリィが地球に残されたことくらいでしょうか。イガ星に旅立つ電たちを見送るリリィの切ない表情に、グッと来た瞬間でもありました。
(加々美利治)