実写『ゴールデンカムイ』続編がWOWOWドラマで物議 映画→有料配信への手法は今後定着するか
「映画から有料放送・配信」の意図

この新手法がなぜ登場したのかというと、配信や有料放送の加入者獲得競争の激化があります。そして、そのためにそれぞれの事業者は「独占タイトル」を必要としているのです。
しかし、独占配信というのはけっこう嫌われやすいですし、単純に放送、配信してもあまり話題にならずに終わってしまうことも多いです。ファンからすれば、あらゆるプラットフォームで観られた方が便利に決まっていますから、いち視聴者としても気持ちはよく分かります。しかし、実際、事業者間の競走に勝つためには、他にはないコンテンツを持たないといけません。
ただ、単純に自社のプラットフォームで独占配信作品を出しても観てもらうのが難しいので、「1回外で見せてから独占配信に囲い込む」という戦略が出てきたのだと思われます。映画として広く公開して面白さをアピールすることで、独占タイトルの魅力を知ってもらって加入者増につなげる戦略ですね。
近年、WOWOWは加入者の減少傾向が続いていて、歯止めをかけるためにキラーコンテンツを必要としています。WOWOWは、映画やドラマにスポーツなど魅力的なラインナップを今でもそろえていますが、単純に良い作品を放送しているだけではこの減少に歯止めをかけることが難しいのでしょう。
そもそも、それらのコンテンツに触れる機会が未加入者にはありません。そのため、プラットフォームの外でアピールする必要があります。映画はそれに丁度良く、狙い通りに『ゴールデンカムイ』は高い評価を獲得し、大きな話題になりましたから、事業者目線ではこのやり方は今のところ、一定の成功を収めたと言えるかも知れません。
この手法に対して、「それでは映画は長い予告編のようではないか」という批判も出ています。『ゴールデンカムイ』は映画単体で充分面白いので、決してそんなことはないと思いますが、実際にそういう意味合いがあることは否定できないでしょう。『沈黙の艦隊』については、映画版は「ここで終わり?」感が強く、配信版の好評とは裏腹にやや否定的な意見も多かったです。
また、有料配信・放送に囲い込まれることでファンが心配するのは、自分が加入しないといけないことだけではなく、好きな作品がきちんと盛り上がってくれるのかということでしょう。数年前、Netflixが『TIGER & BUNNY 2』を独占配信しましたが、熱狂的なファンを抱えるタイトルにもかかわらず、盛り上がりがいまひとつに終わってしまいました。「独占されると盛り上がらずに好きな作品が埋もれてしまうのでは」という、ファンの不安を払拭するための努力が事業者には求められると思います。
有料ストリーミング配信が盛り上がる時代となり、どこの事業者も加入者の獲得に苦労しています。配信や放送の競走ポイントは主に、UI(ユーザーインターフェイス)などの使い勝手の良さ、月額料金、そしてコンテンツの3つです。料金を下げるのは利益を削ることになりますし、UIの利便性も大きな差をつけられるかというと、どこも似たり寄ったりです。やはり、コンテンツで差をつけるしかないのでしょう。
このような映画から有料配信・放送へ、という流れが定着するかどうかは、実際にどれだけ加入者を獲得できるかはもちろんのこと、加入してくれたファンが満足できるだけのクオリティの作品を提供することが重要でしょう。有料放送なら、地上波以上に予算をかけることが可能なはずで、それこそが有料プラットフォームが囲い込むことのメリットであるはずです。
ファンが満足するものを出し続けることができれば、「囲い込み」だという批判を乗り越え、ひとつのやり方として定着する可能性は充分あると思います。特に『ゴールデンカムイ』のような長編マンガを端折ってダイジェストにすることなくしっかり実写化するためには、有効な手段となるかもしれません。
(杉本穂高)





