「アニメ版は無理だろ…」を覆す 大問題シーンをしっかり再現しちゃった作品
過激な内容のマンガが地上波でアニメ化される際には、問題のシーンがカットされたり、表現がマイルドになったりすることが珍しくありません。しかし勇気のあるアニメスタッフの場合、どこまでも原作再現を貫き、物議を醸してしまうこともあるようです。
『鬼滅の刃』のおぞましいオブジェも見事に映像化!

原作の再現にとことんこだわったアニメはヒットしやすく、評判も高くなりやすいので、「幸せなアニメ化」といえるでしょう。しかし、あまりにも本気で再現を行った結果、むしろ原作ファンをドン引きさせてしまうケースもあるようです。
●SNSを一躍席巻した『チェンソーマン』の「ゲロチュー」
「ゲロチュー」とは、キスをしながら吐しゃ物を流し込む行為を指します。この言葉を世間に広めたのが、2022年11月に放送されたアニメ『チェンソーマン』の第7話「キスの味」でした。
このエピソードは公安対魔特異4課のデビルハンターたちが居酒屋で新人歓迎会を行うという内容で、「デンジ」が酒癖の悪い先輩「姫野」の標的になります。そして公衆の面前で唇を奪われるのみならず、泥酔した姫野の口から「とろけるモノ」が流れ込んでくるのでした。ファーストキスをとんでもない形で汚されたうえ、「栄養になるモノを飲み込むクセ」が災いし、吐しゃ物を飲み込んでしまう……という、まさに踏んだり蹴ったりな展開です。
原作の時点で大きな衝撃を呼んでいたこのシーンを、アニメではモザイクこそかけていたものの、真っ向勝負で描き切っています。放送後のSNSはさながら「ゲロチュー祭り」の様相で、原作者の藤本タツキ先生も「ながやまこはる」名義のX(旧Twitter)にて「よくジャンプでやれたな」とどこか他人事のように驚いていました。
ちなみにサビで「ゲロチュー」(Get on chu)と連呼する特別ED主題歌「ちゅ、多様性。」は、anoさんが大ブレイクするきっかけともなったため、メディアミックスでの仕掛けとしては大成功といえるのではないでしょうか。
●『鬼滅の刃』「鍛人の断末魔」
もはや国民的コンテンツとなった『鬼滅の刃』にも、よく見ると少年マンガとしてはかなり過激な描写が盛り込まれています。
特に残酷で有名なものといえば、「鍛人(かぬち)の断末魔」でしょう。この言葉が登場するのは「刀鍛冶の里編」で、上弦の鬼である「玉壺」が里で暮らしていた鍛冶職人たちを素材として作り上げた、おぞましいオブジェの名称です。
人間を素材にしてオブジェを作るという発想、5人の人間がデタラメに継ぎ合わされ、至るところからその手足が突き出ているという造形、ひょっとこの面からのぞく鍛冶たちの苦悶の表情、そして「素材」にされた人間の知り合いが思わずその名を呼ぶという情景……。この「鍛人の断末魔」の登場シーンは、どこを切り取っても悲痛で残酷です。
『鬼滅の刃』は幅広い年齢層が観る作品なので、アニメ化にあたって「地上波で放送できるのか?」と心配する原作ファンもいたようです。しかし、いざ放送されてみればまさかの完全再現、それどころか「素材」があげる苦しみの声や、刀を刺された傷から時折血を吹き出す様子など、より細かなディテールが追加されていました。
アニメ制作会社のufotableは、もともと原作再現に定評があるものの、このシーンはこれまで手掛けた作品のなかでも特に高い評価を得ているようです。ネット上の視聴者からも「おぞましいけどスタッフの気合がすごい」「謎の本気度」「アニメ化できるのか? とか言ってたらディテールが細かくなってる」と称賛されていました。