「すべて違ってる」「悔しかった」 何が起きた?「原作者が激怒」したアニメ
私たちがしゃべってるのは日本語ですよ!

●『あさりちゃん』
1978年から連載が始まった『あさりちゃん』は、室山まゆみ先生によるギャグマンガです。小学館の学習雑誌での連載は2014年まで続き、コミックスは100巻を数える大ヒットとなりました。
1982年にアニメ化されて好評を博し、放送は1年以上続いた上、「東映まんがまつり」で劇場版新作も公開されています。しかし、室山先生はアニメ化に不満を抱いていたようです。
原作とアニメを見比べてみると、原作では当初、内弁慶として描かれていた主人公「あさり」がアニメでは第1話から外でも大暴れするキャラクターになっていたり(原作の序盤は学校がまったく登場しませんでした)、原作では存在感がまったくなかった父親が一家の潤滑油になっていたりするという改変が見られます(室山家では姉妹と父親が不仲だったため、ほとんど登場させなかったそうです)。
室山先生が具体的にアニメのどの部分に不満を持っていたのかは明らかではありませんが、アニメ制作側とのやりとりに不信感を抱いていたことが『よりぬきあさりちゃん』に掲載されたインタビューで語られています。
「ちょうど『あさりちゃん』がアニメ化されたときに、自分たちの意見を言えずに苦労したんですよ。熊本なまりのイントネーションまで笑われたりして(筆者注:室山先生は熊本出身)。『私たちがしゃべってるのは日本語ですよ!』って反撃できなかったのがものすごく悔しかったのよねえ」
原作者としての意見を聞いてもらえなかっただけでなく、しゃべり方まで嘲笑されるとは相当なことだと思います。なお、室山先生は後に自作の『どろろんぱっ!』や『Mr.ペンペン』のアニメ化を許諾しているので、二度とアニメ化を認めないと決めたわけではなかったようです。
ちなみに第1話の脚本を担当しているのは『ムーミン』と同じく山崎忠昭氏ですが、これはただの偶然でしょう。
●『しろくまカフェ』
ヒガアロハ先生原作のアニメ『しろくまカフェ』がスタートしたのは、2012年4月のことでした。しかし、同年5月29日にヒガ先生が自身のTwitter(現:X)で、原作の連載の無期限休載を宣言します。
その理由は、アニメ化にあたって原作者が意見を言う場が設けられていなかったからでした。それまで半年ほど、話し合いをしたいと頼み続けても無視されてきましたが、知的財産管理の専門家に作成してもらった文書を配達証明で送ったことで、初めて話し合いの席が設けられたのです。ここにはヒガ先生側の弁理士も同席しました。
話し合いで分かったのが、編集部側が原作者に了解をとらず、アニメ制作側にOKを出していたことです。編集部は全面的に非を認めてヒガ先生に謝罪し、「キャラクターデザインのチェック」と「脚本の事前確認」を行うことができるようになりました。
その後のTwitterでの発言によると、ヒガ先生は話し合いの席上、「アニメ『しろくまカフェ』自体は、クオリティも高く、なによりがんばって作ってくださっているのが伝わってくる仕上がりで、感謝しています」と、アニメ制作会社側に伝えたそうです。
その後、連載は2012年9月号から再開し、同年11月1日に放送された劇中のアイドルグループ、「ヤマアラシ」(演:宮野真守ほか)が東京ドームでライブを行うというエピソード「アイドル・ヤマアラシ」には、ヒガ先生が雑誌編集部の人たちと一緒に観客のひとりとして声の出演をしていました。ヒガ先生の断固とした行動が、和解へと至る要因になったのでしょう。
こうして振り返ってみると、原作者の怒りのポイントは、作品のクオリティだけではなく、意見を受け入れてもらえないこと、自身をないがしろにされたことにも置かれていることが分かります(すべてのケースがそうだとは限りませんが)。
原作があるアニメを制作する場合、まず大切なのは原作者との密なコミュニケーションを欠かさないことです。それが、トラブル回避のための第一歩となるのではないでしょうか。
(大山くまお)

