「RX-78」「MS-10L」…「ガンダム」シリーズにおけるMSの「型式番号」が定着するまで
型式番号が数パターンある単純なワケとは?

最初に混乱を招いたのは「MS-10L」という型式番号です。バンダイが主に模型店などに置いていた小冊子「模型情報」1981年4月号で、大河原さんが描き下ろしたカラーイラストに表記がありました。
この「MS-10L GUF」(表記ママ)と記されていたMSは、現在では「MS-07 グフ」と呼ばれているものです。当時の設定管理システムは現在のように確立されておらず、こういった形で先行してしまうことも珍しくありません。もちろん「MS-07」がグフという設定はまだ公式では出ておらず、大河原さんが間違えたというわけでもないのです。
ちなみに翌月の「模型情報」1981年5月号では、大河原さんは3機の「ドム」を描き下ろしました。この時の表記は「ZION HEAVY MS DOM」(表記ママ)となっています。おそらくグフは間に合わなかったのでスルーでしたが、ドムの時には何らかの抑止力が働いたのでしょう。
結果論になりますが、この時のままグフが「MS-10L」として進んでいれば、後の「MSV」で隙間を埋める作業がやりやすかったかもしれません。それはすなわち、ジオン軍のMSの数が今以上に増えていた可能性があるということです。
制作会社である「日本サンライズ」(現、バンダイナムコフィルムワークス)があずかり知らぬところで型式番号が独り歩きした例は、ほかにもありました。それが1981年8月に販売されたムック本「ガンダムセンチュリー」(みのり書房)です。後にこの本は「ガンダム」シリーズにおける「設定」の基礎となりました。
この書籍で、後の公式設定と異なってしまったのが、劇場版第3作『めぐりあい宇宙』以降に登場するMSとMA(モビルアーマー)の型式番号です。前述した「模型情報」と同じように、製作側と出版側ですり合わせができないまま発売されたことが原因でしょう。
「ガンダムセンチュリー」では「MSN-02 ジオング」と「MAN-08 エルメス」と記載されていましたが、劇場などで販売された4枚つづりのグループ鑑賞券には「MS-X16 ZIONG」「MA-05E HERMES」と、異なる表記になってしまいました。
常識的に考えて、製作側が設定した型式番号が正式のものとなるところでしょう。ところが、現在の表記を知っている人ならご承知の通り、「ガンダムセンチュリー」のものが現在は正式なものとして認知されています。これは、それだけ「ガンダムセンチュリー」の影響力が当時は大きかったことの証明といえるかもしれません。
こうした表記揺れはいくつかあったものの、数年後に続編となる『機動戦士Ζガンダム』が発表される頃には、製作側の設定した型式番号がデザイン画と同時に発表されるようになり、そこからの混乱はほとんどなくなりました。もっとも出版側の誤字による表記ミスがそのままになるということもあって、誤った型式番号が世に出てしまうということがいくつかあったそうです。
制作側のチェックが厳しくなったのは、筆者の体感ですが、21世紀になる前後くらいだったでしょうか。厳しすぎて差し戻しになることも少なくありませんでした。現在、まれに違った型式番号が紹介されているのも、ガンダム誕生期にあった些細なミスが原因だったということになります。
(加々美利治)









