「ジオング」の「脚」はホントに無駄なのか? 独自理論AMBACとその実用性
『機動戦士ガンダム』における最強のライバルモビルスーツといえばジオングです。しかし脚がなくても完全体なのか、それとも急遽出撃することになって脚を着けられなかった機体なのか意見が分かれます。果たしてどちらが正しいのでしょうか。
巨大ロボットアニメの根幹を揺るがす素朴な疑問

『機動戦士ガンダム』には、たびたび盛り上がる定番のテーマがあります。そのなかのひとつが「ジオング」の脚にまつわる議論です。アニメ本編において「現状でジオングの性能は100%出せます」と整備兵は言いましたが、果たして本当なのでしょうか。
●モビルスーツに脚が必要な理由
そもそも『ガンダム』に限らずロボットアニメにおいて、宇宙で戦う兵器に手足が必要なのかという素朴な疑問があります。実際の宇宙開発に使われている探査機や、宇宙飛行士が船外活動の際に装着する有人機動ユニットMMU(Manned Maneuvering Unit)は、スラスター(推進システム:thruster)による姿勢制御を行っており、人型をしていません。
腕については、実際の宇宙船にマニピュレータがついていることから、汎用性のある兵器マウントとしての役割があると言えないことはありませんが、脚に関しては、格闘しないのであればスラスターでよいのではないか、つまり脚がないジオングで良いのではないか、ということです。リアリティのある作品世界を求めるファンからすると、好ましくない結論だといえるでしょう。
しかし、このような疑問に対するSF的な理論武装は存在します。それが人型兵器の有用性を主張するための、ガンダムユニバースにおけるオリジナル理論、「AMBAC(アンバック:Active Mass Balance Auto Control 能動的質量移動による自動姿勢制御)」です。
AMBACとは、胴体から伸びている手足を旋回させることで慣性を生み出し、スラスターによる姿勢制御を補助するというものです。スラスターの生み出す直線的な軌道に変化をつけられそうですし、パイロットの技量が大きく反映されそうです。
またAMBAC機動はYouTubeの「バンダイ公式チャンネル BANDAI OFFICIAL」に動画がアップされていることもあり、ガンダムユニバースにおいて重要な理論だといえます。
このことから、つまり脚のないジオングはAMBAC機動ができないため、やはり不完全だったという見方のほうが有力と思われます。さまざまな「ガンダム」派生作品で、脚のある「パーフェクト・ジオング」が、ジオングの上位機体として存在するのもそのためでしょう。
シャア・アズナブルに対し、ジオングの性能は100%出せるといった整備兵が、AMBACを知らないはずはありません。不完全な機体に搭乗するエースパイロットを不安がらせないよう、「脚がついていない」とこぼしたシャアに、「あんなの(脚)は飾りです。偉い人にはそれがわからんのですよ」と強気な発言をしたのかもしれません。