直系後継機「ザクIII」はどこまで進化した? MS史の位置づけは「ザクII未満」?
「モビルスーツの代名詞」の一角である「ザクII」はさまざまな後継機が作られるものの、「直系後継機」といえるのはやはり「ザクIII」でしょう。とはいえIIほどメジャーではないのはなぜなのでしょうか。
軍の象徴として開発された「ザクIII」

TVアニメ『機動戦士ガンダム』に登場したジオン軍のモビルスーツ(MS)といえば、「ザクII」がその代名詞でしょう。汎用性に優れ、地球連邦軍とジオン軍による戦いを描いた「一年戦争」においては、あらゆる場面で見せ場がありました。
そして「ガンダム」シリーズはTVアニメ、劇場版と展開し、物語を紡ぐとともに、さまざまな形でザクIIの系譜も受け継がれることになります。『機動戦士Zガンダム』では、地球連邦軍と旧ジオン軍の技術を融合して開発された「ハイザック」、ザクIIのパーツが流用された「ドラッツェ」、そして、『機動戦士ガンダムZZ』に登場した「ザクIII」など、枚挙に暇がありません。
特にザクIIIは、ザクの名前を引き継いだ正当な後継機であり、紆余曲折を経て迎えたザクIIの進化形態ともいえます。そもそもザクIIIは、「アクシズ」(ネオ・ジオン)によって「ジオンの象徴たるザク」というテーマのもとに開発された機体です。
開発にあたって、ザクIIの弱点であった装甲をボリュームアップし、武装面は「頭部ビーム・キャノン」、腰部フロントアーマーに内蔵する「ビーム・サーベル兼用のビーム・キャノン」が備わっており、当時の最新技術がふんだんに盛り込まれています。
汎用性の高さも追及していたため、「ビーム・ライフル」などの各種装備は他の機体と共有する形を取りました。その結果、地球連邦軍によるハイザックの性能を遥かに凌駕するほどの機体になったのです。
これは、旧ジオン軍と地球連邦軍の技術という、いわば技術のハイブリッドたるハイザックに対抗するべく、ジオンの系譜であるアクシズが「己の力だけで新たなザクを作る」という強い信念のもとに成し得た偉業といっていいでしょう。
その後、極限にチューンナップされて「強化人間専用機」となったのが「ザクIII改」です。頭部ビーム砲は取り除かれた代わりに「30mmバルカン」を搭載し、さらに専用設計されたビーム・ライフルも開発されました。ザクIIIよりも性能が格段にパワーアップしたものの一般のパイロットには操縦が難しく、結果的に強化人間である「マシュマー・セロ」の専用機として運用されました。
またザクIIIの頭部にあった3本のブレード・アンテナは、改修によって1本になったうえに、グレーを基調としたカラーリングがグリーン系の塗装に変わったため、ザクIII改の方がザクIIのイメージに近くなっています。搭乗者は選ぶものの、高性能を得た同機は「歴代ザク最強」といわれるMSまでに進化したのです。
ちなみに『機動戦士ガンダムUC』の「ラプラス事件」から数か月後のことを描きアニメ化などもされたWEB小説『機動戦士ガンダム Twilight AXIS』(著:中村浩二郎/ストーリー構成・デザイン協力:Ark Performance)には、新生ネオ・ジオンの総帥だった「シャア・アズナブル」大佐の搭乗を前提に開発された赤色のザクIIIが登場しました。しかし、シャアは第二次ネオ・ジオン戦争によって行方不明になったためその搭乗はかなわず、一方で偶然が重なりシャア専属のテストパイロットだった「ダントン・ハイレッグ」が搭乗しています。