『銀河鉄道999』の機械伯爵はなぜ顔の真ん中にメーターがあったのか 誰かに見せるの?
機械伯爵は機械帝国に管理される被支配階級だった?

最後の可能性が、「他人にメーターを見てもらう」すなわち「管理される立場にある」、という見方です。管理するのは全宇宙の支配をめざす機械帝国であり、一国一城の主を気取る機械伯爵も、権力ピラミッドのいち部品に過ぎないという皮肉です。
そうなると、宇宙に散らばる星々を、機械帝国のエージェントがいちいち巡回して管理しているのか、等、疑問は尽きませんが、実は「そのエージェントの足としての銀河鉄道」という構図もあり得るでしょう。
また、惑星メーテルの機械人が鉄郎について「勇猛果敢さ、責任感の強さは、全てコンピューターでコントロールセンターに送られてきておりました」と言及していたので、5Gを超える速度の無線通信ネットワークがあってもおかしくはなく、機械伯爵もクラウド経由でリモート管理されていた、とも考えられます。
しかし、基本的に機械化人は強制的に改造されるわけではなく、体を「買う」ものだと鉄郎の母もいっていました。そもそも鉄郎が999号に乗ったのも、機械の体をタダでくれる星に行くためです。少なくとも、上流階級や大金持ちが、「支配されるためにカネを払う」というのもおかしな話でしょう。
これらをすり合わせる案としては、「料金別プラン」もアリかもしれません。つまり十分にお金を払える人たちは縛りのないボディを手に入れられ、機械帝国にメンテをしてもらうため定期的に課金をしているのです。かたや、無料でもらいたい人たちは惑星を支える壁やネジなど、がんじがらめのオプションが付いてきます。「タダほど高いものはない」のは、現実の21世紀にもよくあることです。
その場合、機械伯爵の顔メーターは機械帝国への高額課金マークであり、リモート管理のデータを送信するパーツでもあり、直接に検診できる計器も兼ねている……という仮説が浮かんできます。メーター付きとはいえ、無料ユーザーがネジにされるのとは対照的であり、格差社会の象徴にもなります。
ともあれTVアニメ版では「冒頭に10歳の子供に乱射されてあっさり退場」のモブに過ぎなかった機械伯爵が、劇場アニメではこれほど思索を深められる重要キャラにのし上がったことが感慨深いですね。
(多根清史)