「ジャンプ」の二大ラスボス『呪術廻戦』宿儺と『鬼滅』無惨←共通点が残念すぎ
一匹狼が原因で起こった「悲劇」

強力な戦闘力や治癒能力を持つ無惨と宿儺が敗北したのは、まさにその自己中心ぶりが原因だといえるでしょう。特に無惨は弱点である太陽の光を克服する手段を求めて、配下の人喰い鬼を増やしたことが失敗のはじまりです。
無惨は長年にわたって配下の鬼たちが引き起こす被害のせいで、意図せずして多くの恨みを集めてしまい、ついには刺客(鬼殺隊)を呼び込んで身の破滅を招きました。無惨は安全マージンを稼ごうと欲張りすぎて自滅したのです。
もしも無惨がひとりで生き続けていたとしたら、その被害は一般の犯罪に紛れてしまい、鬼殺隊に見つかることはなかったでしょう。太陽の克服など諦めて配下を増やさず「出会ったら命がない1匹の怪異」として存在する道もあったはずです。
宿儺もまた封印されていた自分の指(特級呪物)を集め、崇めてくれる呪霊たちを率いていれば敗北しなかったでしょう。宿儺は自分の復活に尽力してくれた特級呪霊すらゴミのように扱いました。『呪術廻戦 公式ファンブック』でも妻子はおらず、天災のように扱われていたとの記述があります。
宿儺は強すぎたために他人の心が分からず、他者に価値を見出すことができない人物です。結果として自己保存を超える価値観を持つことができず、個人であり続けるしかなかったのでしょう。
いかに強力な個人であっても集団には敵いません。無惨と宿儺は個人よりも集団を優先できる人びとの「群れ」に負けたのです。
●宿儺と虎杖、無惨と炭治郎
宿儺と虎杖はまさに鏡写しのような存在で『呪術廻戦』のテーマを体現しています。究極のエゴイストである宿儺に対し、虎杖は「自分は呪いを払う道具だ」と言い切るほどの自己犠牲精神を発揮しているからです。
虎杖が精神世界で宿儺に自分の育った街を案内して思い出を共有したのも、自分が強すぎて人の痛みが実感できなかったと告白したのも、自分と似ている宿儺に「自分のように他者との関係性の価値に気付いてほしかった」からでしょう。
無惨と炭治郎もまた正反対の存在です。「今だけ・自分だけ」で完結している無惨に対し、炭治郎は長年にわたって受け継がれてきた呼吸の技術や鬼滅隊の隊士たちの想いを継承しているからです。炭治郎は個人を超える価値観を生きる人物なのです。
しかし結局のところ、宿儺は虎杖が尊重する価値観をすべて無意味と断じて決裂し、最終決戦で伏黒の肉体から引き剥がされて敗北します。無惨も陽の光に焼かれて肉体を失ってから炭治郎のなかで「都合よく」人の想いの永遠性に気付きました。ふたりとも1000年間もワガママ放題だったのですから、改心など不可能だったのです。
『呪術廻戦』と『鬼滅の刃』では共通して、他者を顧みない強者の横暴を弱者が協力して抑止したという構図が描かれています。生まれながらに強すぎて、あるいはサイコパス気質が強すぎて他者の存在価値を認められない人間は怪物となり、ついには討たれるのです。
※記事の一部を修正しました(2024年9月17日10:22)
(レトロ@長谷部 耕平)



