押井守監督が描いた現代の「二・二六事件」? 『パトレイバー』の人気回「二課の一番長い日」
スケールアップした劇場版『パトレイバー2』で、再びクーデター勃発

押井監督が再び「二・二六事件」を題材にしたのが、劇場アニメ『機動警察パトレイバー2 the MOVIE』(1993年)です。名前は甲斐ではなく、柘植(CV:根津甚八)となっていますが、やはり自衛隊の一部がクーデターを起こし、平和ボケしていた日本に衝撃を与えるという内容です。
柘植の指示を受けた戦闘ヘリコプターが、都内の通信施設や警視庁を次々と破壊して回ります。さらに3機の無人飛行船が東京上空を旋回。警察が飛行船を狙撃すると、飛行船は自動操縦で落下し、大量のガスを噴出するのでした。新宿一帯はパニック状態に陥ります。
日本がもし戦争に巻き込まれたら、東京都内で大規模テロが起きたら……。そんな状況を、押井監督はリアリティーたっぷりにシミュレートしてみせています。「二課の一番長い日」を、スケールアップしたのが劇場版『パトレイバー2』だと言えるでしょう。そして柘植の野望は、実写版『THE NEXT GENERATION パトレイバー 首都決戦』(2015年)に受け継がれることになります。
危機管理能力の高い後藤隊長
注目すべきは、個性派ぞろいの第二小隊をまとめる後藤隊長の危機管理能力の高さでしょう。普段は昼行灯として過ごしている後藤隊長ですが、危険な気配を察知するや、情報の真偽を素早く確かめます。第一小隊の南雲隊長(CV:榊原良子)が直情的な行動に走ろうとすると、やんわりとなだめます。『パトレイバー2』での「不正義の平和だろうと、正義の戦争よりまし」という後藤隊長の言葉は名言として知られています。
そんな後藤隊長のもとに、第二小隊のメンバーは固い覚悟で集結します。後藤隊長は、押井監督が考える「理想の上司像」ではないでしょうか。
現実世界の歴史では、クーデターの首謀者や思想家らが処刑された「二・二六事件」の後、軍部は政治に深く介入するようになり、翌1937年(昭和12年)に「盧溝橋事件」が勃発。日本は中国との戦争に踏み出していきます。
日本の歴史を大きく変えた事件が、1936年2月26日に起きたことは、ぜひ覚えておいてください。
(長野辰次)



