押井守監督が描いた現代の「二・二六事件」? 『パトレイバー』の人気回「二課の一番長い日」
オリジナルビデオアニメ『機動警察パトレイバー』の人気エピソード「二課の一番長い日」は、日本史における重大な事件をモチーフにした物語です。自衛隊がクーデターを起こすという未曾有の事態に対し、「特車二課」の後藤隊長はどのように対応したのでしょうか?
雪が降る東京で実際に起きた大事件

雪が降る2月26日に、大事件が起きました。旧日本陸軍の青年将校たちが決起し、首相官邸や警視庁などを武装占拠したのです。これが1936年(昭和11年)に起きた「二・二六事件」です。
政治腐敗や社会格差を憂いた青年将校らのクーデターは、4日後に鎮圧されました。しかし、この事件がきっかけで、日本は戦争へと向かうことになります。
日本じゅうを震撼させた「二・二六事件」をモチーフにしたアニメ作品があるのは、ご存知でしょうか? 押井守監督のブレイク作として知られるオリジナルビデオアニメ『機動警察パトレイバー』(1988年)の第5話、第6話「二課の一番長い日」前編・後編は、自衛隊が反乱を起こすという重厚な内容となっています。
戦車が走る地下鉄永田町駅
冬の東京。レイバー犯罪を取り締まる警視庁の「特車二課」第二小隊の面々は、のんびりと休日を過ごしていました。暇を持て余していた遊馬(CV:古川登志夫)は、北海道に帰省していた野明(CV:富永みーな)の自宅まで遊びに行くことに。そんな折、立ち寄った立ち食いそば屋で、遊馬は鋭い顔つきの男と遭遇します。
この男・甲斐(CV:筈見純)は、一部の自衛隊員らによる反乱の思想的指導者でした。甲斐の考えた作戦に従い、実行部隊は軍用レイバーを奪い、国会をはじめとする都内の重要拠点を占拠します。地下鉄永田町駅を戦車が走るというシーンが、尋常ではない事態であることを感じさせます。
不穏な動きをいち早く察知したのは、第二小隊の後藤隊長(CV:大林隆介)でした。後藤隊長の判断によって、レイバーは事前に持ち出され、かろうじて難を逃れるのでした。
一方、クーデターの首謀者である甲斐は、核ミサイルも入手し、意外な経路から東京へ持ち込もうとします。東京都民1000万人を人質にしようという考えです。事件を知った遊馬、野明らは休日を返上して東京へと急ぎます。武力で上回る自衛隊を相手に、後藤隊長ら第二小隊は無謀とも思える戦いに挑むことになります。
岡本喜八監督の実写映画『日本のいちばん長い日』(1967年)をオマージュしたタイトルである「二課の一番長い日」は、オリジナルビデオ版『パトレイバー』の人気エピソードです。甲斐と後藤との頭脳戦は、間一髪で「特車二課」側の勝利となります。しかし、「生きていれば もう一回くらいやれるさ」と甲斐が不敵に笑う顔のアップで、この2話構成のエピソードは終わっています。