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『ガンダム』スレッガーの初登場シーンに若い世代が困惑? 「なんじゃこのポーズ…」

『機動戦士ガンダム』のスレッガー・ロウが初登場時に決めていた「波止場立ちポーズ」は、若い世代には伝わりにくい?

「昭和の香り」漂う演出

「波止場立ち」を決める水夫(画像:イラストAC)
「波止場立ち」を決める水夫(画像:イラストAC)

 最近、とあるガンダム関連のツイートが話題を呼んでいました。ガンダム初心者が『機動戦士ガンダム』を視聴した際、「スレッガー・ロウ」の初登場時のポーズが変だというのです。

 問題のポーズが登場したのは、『機動戦士ガンダム』の第31話「ザンジバル、追撃!」で、ホワイトベース隊の補充要員としてやってきたスレッガーが、「よう!ホワイトベース隊の責任者は誰だい?」と告げるシーンです。スレッガーは、手荷物を肩に引っ提げ、チェーンフェンスに片足をかけているポーズをしていました。

 いま見て変だと感じる人がいた一方で、当時の視聴者にとってこのポーズはなじみ深いものでした。

 このポーズは、「波止場立ち」や「マドロス(水夫)ポーズ」などと呼ばれています。故・石原裕次郎さんや加山雄三さんなど、昭和の歌謡曲スターや映画俳優たちがよく決めていたポーズで、カッコよさや自由奔放な風来坊のイメージを象徴するものでした。

 では、なぜスレッガーは、初登場時にこのポーズをしていたのでしょうか。

 スレッガーは、主人公「アムロ・レイ」ら10代の若者たちと比べると、お調子ものでありながら大人の風格を持つ軍人として登場します。彼の大人っぽさは作中の言動にも表れており、たとえば、元婚約者のありがたい申し出をかたくなに拒み、失礼な言動を続ける「ミライ・ヤシマ」を平手打ちして諭す(今の時代ではコンプライアンス的に褒められたものではないかもしれませんが)など、ホワイトベース隊の兄貴分的な立場になっていきます。

 アニメにおいてキャラクターの初登場シーンは重要で、多くの作品において、その人物の性格や立ち位置が、ひと目見て分かるように演出されているものです。

 スレッガーの場合、「波止場立ち」というポーズひとつで、「ちょっとイカした大人」「頼りになるけど型破りな先輩」といったイメージを瞬時に伝えることができたわけです。富野由悠季監督らスタッフが、当時の文化的な文脈を活用し、スレッガーのキャラクター性を作画演出として表現したのでしょう。

 しかし、1979年の放送開始から45年以上が経ったいま、この「波止場立ち」というポーズの文化的意味合いは若い世代には必ずしも伝わらなくなっているのかもしれません。

 アニメに限らず、多くの作品には制作された時代の文化的な文脈が反映されているものです。そうした時代の痕跡を発見することも、「ファーストガンダム」のような古い作品を楽しむ醍醐味のひとつかもしれません。

(マグミクス編集部)

【画像】えっ、カッコイイ! こちらが初登場シーンで「波止場ポーズ」を決めていた『ガンダム』スレッガー中尉です(4枚)

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