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「どんな陵辱にだって耐えられた」 『エヴァ』ゲンドウの愛人、“全裸尋問”…赤木リツコの苦難な生き様

科学者、女、そして娘としてのリツコ

画像は「新世紀エヴァンゲリオン DVD STANDARD EDITION Vol.8」(キングレコード)
画像は「新世紀エヴァンゲリオン DVD STANDARD EDITION Vol.8」(キングレコード)

 なぜなら、リツコもまた、「女である」ということから逃れられない人生を送っているからです。後に、リツコは「碇ゲンドウ」の愛人であることが明かされますが、それは母のナオコが辿(たど)った道でもあります。そのせいでナオコは破滅の道を歩み、リツコは女としての母を憎んでいるとすら言っているにもかかわらず、同じ男を愛して利用されてしまうのです。

 愛人にしているのみならず、ゲンドウはリツコを綾波レイの身代わりとして、ゼーレの尋問に差し出したりもしています。そこで全裸にされて恥辱を味あわされてもなお、冷静に対応するリツコですが、自分がレイの身代わりだったことを知ると表情に変化があります。その後、「憎いから」と称して、レイのクローンのバックアップを破壊するという行為に出るのです。

 これまで、理性的な行動が目立ったリツコの、非合理的で情念的とも言える行動に視聴者は衝撃を受けることになりました。普段冷静で合理的なキャラクターだからこそ、こうした行動は意外性もあり、衝撃も大きくなります。

 こうした一連の行動を振り返ると、リツコもまた、母のナオコと同じく3人の自分がせめぎ合っているのではないかと思えます。科学者としての自分、女としての自分、そして、母を憎みながらも愛情を求めている娘としての自分。

 リツコは、最後にゲンドウへの復讐を試み、銃を向けます。その時、母の分身ともいえる存在のMAGIを使ってNERV本部を自壊させようとするリツコですが、女としての母が反映されたカスパーがその命令を拒否することで、リツコの目論見は潰えます。

 女としての母に裏切られたようなかっこうのリツコですが、NERVを破壊するのにMAGIを用いようとする辺り、本当は母親に助けてほしかったという想いが見え隠れしているような気がします。この時、リツコの「母さんは、娘より、自分の男を選ぶのね」というセリフにそういう気持ちが込められています。娘である自分を、なんだかんだ母は最後には助けてくれると信じていたのではないでしょうか。

 最後にリツコはゲンドウに撃たれてしまうわけですが、彼女の最後のセリフは笑顔を浮かべた「うそつき」というセリフ。この時、ゲンドウが何を言ったのかは、映像作品でははっきりと明示されませんが(マンガ版には描写あり)、うそとわかっていても彼女にとって嬉しい一言だったのでしょう。

 物語終盤のリツコの行動は、序盤の彼女の印象とは異なり、合理的なものではありません。むしろ、極めて非合理的ですらあります。しかし、理知的な科学者としての側面とは別の面、女や娘としての側面とのせめぎ合いがあったのだとすれば、色々と理解できる部分があるように思います。

 一番身近な同性である母の背中を、科学者としても、女としても追いかけることになってしまった彼女の悲劇は、生々しい人間としてのリアルさがあります。こうした生々しさもまた『新世紀エヴァンゲリオン』という魅力ひとつだと改めて思うのです。

(杉本穂高)

【画像】えっ、スタイル良すぎんか…こちらが“全裸尋問”された『エヴァ』赤木リツコのビジュアルです(4枚)

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