幻じゃなかった『ヤマト完結編』お子様にはちと早い最後のシーン これを劇場で観た話
劇場アニメ作品『宇宙戦艦ヤマト 完結編』には、いくつかのバージョンがあります。2025年現在、動画配信サービスで観られるのは、最初の劇場公開版からさまざまな点が変更されたものです。それは最後の、例のシーンにも及んでいました。
鮮烈な幼少期の思い出が…幻でも見ていたのか?

Amazon Prime Video、FOD、U-NEXTの各動画サービスにて2025年4月4日より、オリジナル版「宇宙戦艦ヤマト」シリーズの劇場公開作品などが配信されています。そのひとつ『宇宙戦艦ヤマト 完結編』を観たとある男性は、「なんか昔観たのと違う」と、違和感を覚えたそうです。いわく、「最後、ものすごいラブシーンだった覚えがあるんですけど、それがなかった」とか。
こちらの男性(50代会社員)は幼少期にこの『ヤマト完結編』を「家族で、映画館で観ました」といい、今回、動画配信サービスで観たのはそれ以来、実に42年ぶりだったそうです。
「(改めて観るまでは)いろいろと細かいことは忘れていましたが、大筋のストーリーと、ぐるぐる渦巻くピンクのバリアのようなものと、ヤマトが沈むところは覚えていました。あと最後、古代と雪のラブシーンが長めにあって、子供心にいけないものを観ているような気分になったことが記憶に焼き付いています」(50代会社員男性)
そのようなわけで、今回の配信を観ている際にも、ラストに向け「なにかこう、緊張感のようなものがあった」とか。そして実際にそのシーンを迎えてみると、あまりにアッサリとしたもので「え、こんな短かったっけ? というのが正直なところでした」といいます。なにぶん40年以上前の記憶でもあり、男性は「いけない気持ち」だったからこそ長く感じたのかな、とも思ったとか。
ところがそのラブシーン、実際に長かった可能性があります。
『宇宙戦艦ヤマト 完結編』は、1983年3月19日に劇場公開されました。その最初の劇場公開バージョンには、確かに本作主人公「古代進」とヒロイン「森雪」の「長めの」ラブシーンが存在したのです。
そして本作には「70mm版」と呼ばれるバージョンが存在します。こちらは同年11月に一部の劇場で公開されたもので、映像と音響がより高品質なものになっていました。
2025年4月現在、動画配信サービスで観られるものはこの70mm版が元になっており、最初の劇場公開版と比較すると、シーンの追加やセリフの変更などが見られ、くだんのラブシーンはカットされて止め絵のみとなっています。
ではどのタイミングでラブシーンがカットされたのでしょうか。今回の調査のなかでは、最速のものだと「最初の劇場公開2日目にはカットされていた」という証言が得られました。ネット上にはこれと同様に「最初の劇場公開2日目」という情報のほか、「最初の劇場公開期間中のどこかでカットされた」という情報もあり、ややばらつきが見られます。全国一律にこの日からフィルムをさしかえ、ということはないでしょうから、届いた劇場から順次、くだんのシーンは観られなくなっていった、というのが実情と推測されます。ネット上にはこのほか、「70mm版にもラブシーンは存在した」という情報も見られましたが、確認は取れませんでした。
なお、2025年現在流通しているDVDおよびBlu-rayには、本編とは別枠でこのラブシーンが収録されており、シーンそのものを鑑賞することは可能です。露骨な描写こそないものの、劇場で、家族連れで観るには、ちょっと気まずいものがあるかもしれません。
先の男性が観たというラブシーンはおそらく、この最初の劇場公開バージョンに存在していたもので、いまとなっては貴重な歴史を目撃していた、ともいえるでしょう。
(マグミクス編集部)