犯人に近づくと“突先”がキュン…80年代お色気マンガの傑作『胸キュン刑事』 実写ドラマもあった?
先日のマグミクス『やるっきゃ騎士』記事で多くのファンが言及した『胸キュン刑事』。遠山光先生が「週刊少年マガジン」で挑んだこの作品は、犯人に近づくと胸の「突先」が反応する超能力設定と、お色気×刑事サスペンスの組み合わせで人気を博しました。
斬新過ぎた超能力設定

先日、マグミクスでみやすのんき先生のマンガ『やるっきゃ騎士』について取り上げたところ、当時の思い出に花を咲かせるファンが多くいました。そのなかで言及が多かったのが、同じく1980年代のお色気マンガ『胸キュン刑事』です。
『やるっきゃ騎士』と同時代を彩ったこの作品は、読者の記憶に深く刻まれているようで、「あの頃のお色気マンガといえば『胸キュン刑事』も忘れられない」といったコメントが相次いでいます。
なぜこの作品がこれほどまでに印象深いのでしょうか。
『胸キュン刑事』は、遠山光先生が1986年から1987年にかけて「週刊少年マガジン」で連載していた作品です。遠山先生といえば、1982年に「月刊少年マガジン」で連載したお色気コメディ作品『ハート・キャッチいずみちゃん(※実際のタイトルはハートマークあり)』でもヒットを飛ばしていましたが、本作は先生にとって「週刊少年マガジン」での初連載という新たな挑戦でもありました。
注目すべきは、従来のお色気マンガに「刑事モノサスペンス」という新しい要素を加えたことです。単純なお色気展開だけでなく、事件解決という明確な目的を持たせることで、作品に推理要素とドラマ性を与えました。
本作最大の特徴は、主人公「皇くるみ(すめらぎ・くるみ)」が持つ独特な超能力設定にあります。彼女は犯人に近づくと胸の「突先」が「キュン」とするという、なんともいえない超能力の持ち主です。この能力は凶悪事件から些細なうそまで幅広く反応するため、くるみの捜査には欠かせないものでした。
しかし、ここからが遠山先生の巧妙な仕掛けです。「胸キュン」で犯人がわかっても、それだけでは証拠にならないため逮捕できません。そこでくるみは独断で潜入捜査を敢行するのですが、ほとんどの場合、逆に犯人に捕らえられてピンチに陥ってしまいます。
この「証拠不足→潜入捜査→ピンチ→お色気描写」という一連の流れが、作品のお約束展開となっていました。看護婦姿やメイド姿など、くるみの多彩なコスプレも見どころのひとつです。単なるお色気シーンではなく、「捜査のため」という大義名分があることで、読者も安心して楽しめる構造になっていたのです。
さらに驚くべきは、1987年に実写ドラマ化が実現したことです。しかもテレビ朝日系で毎週土曜19時半から放送されるという、ゴールデンタイムに近い時間帯での放送でした。
主演を務めたのは、後に健康的なお色気でバラエティー番組やグラビアで人気を博した、元「シェイプUPガールズ」の梶原真弓さんです。
ドラマ版では原作の設定に若干の手直しが加えられ、くるみは人事課のコンピュータトラブルで突然刑事に転向させられたという設定になっています。そして原作マンガでの「胸キュン」シーンは、突先がキュンとなるのではなく、胸が膨らむ(ギミック入りのバストを使用)という描写に変更されています。
『胸キュン刑事』は、1980年代のお色気マンガブームの中でも異彩を放つ作品でした。単なるお色気描写にとどまらず、刑事サスペンスという要素を組み合わせることで、新たなエンターテインメントの形を提示しました。しかも、週刊の少年誌で連載されていたという、いまの時代では見ることのできない、おおらかで刺激的な表現が許されていた時代だからこそ生まれた貴重な作品といえるでしょう。
(マグミクス編集部)