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100年後の日本? 『母をたずねて三千里』母親の出稼ぎ先の現状に明日は我が身の声

『母をたずねて三千里』にて、母親はなぜイタリアからアルゼンチンへ出稼ぎに出たのかを解説した記事に、多くの反響が寄せられました。物語の舞台の現状に、日本の未来を重ねる声が多く聞かれます。

「アルゼンチンへ出稼ぎ」という設定は「身につまされる話」?

日本アニメーション社の創業50周年を記念し、HDリマスター版『母をたずねて三千里』がCSファミリー劇場にて毎週日曜6時より放送中 (C)NIPPON ANIMATION CO.,LTD.
日本アニメーション社の創業50周年を記念し、HDリマスター版『母をたずねて三千里』がCSファミリー劇場にて毎週日曜6時より放送中 (C)NIPPON ANIMATION CO.,LTD.

 100年後の日本は、どうなっているのでしょうか。

 マグミクスが2025年5月31日に配信した記事「『母をたずねて三千里』出稼ぎ先がなぜアルゼンチン? いまでは考えられない当時の話」に、多くの反響が寄せられました。なかでも大いに話題となっていたのが、現実世界における19世紀末のアルゼンチンが「世界有数の経済大国」だったという事実のようです。

 記事では、主人公「マルコ」の母がなぜわざわざイタリアからアルゼンチンへ出稼ぎに出たのか、という点について、当時のアルゼンチンが農業や畜産業で大いに潤う経済大国だったからとし、「出稼ぎ先の設定」としてなんら不自然ではないとしています。あわせて第二次世界大戦以降、現在にいたるまで、アルゼンチンは経済危機とデフォルトを繰り返す不安定な経済状況にあることも説明していました。

 これは歴史的事実ではありますが、現在の姿からはなかなかに想像しづらいものがあるようです。読者からは「アルゼンチンが経済大国だったなんて知らなかった」「今の日本の未来を見ているようで怖い」といった声が聞かれます。

 1971年にノーベル経済学賞を受賞したアメリカの経済学者、サイモン・クズネッツの「世界には4種類の国がある。先進国と発展途上国、そして日本とアルゼンチンだ」との言葉を引用したコメントも見られました。これは太平洋戦争による壊滅的な状態から経済復興し先進国になった日本と、逆に先進国から転落したアルゼンチンを、マクロ経済学的観点から表現したもので、経済学の界隈では実に広く知られた言葉といいます。

 そのクズネッツの言葉を前提とし、「20年ほど前の某誌で『世界には3種類の国がある。先進国と途上国とアルゼンチンだ。そして今そのアルゼンチンのグループに日本が入ろうとしている』という記事があった」との声も寄せられていました。「あれから20年余り、日本は本当にアルゼンチンと同じ道筋を歩んでいる」という指摘は、経済学に縁のなかった人でも実感のともなうものとして感じられるのではないでしょうか。

 ではなぜ、アルゼンチンは凋落してしまったのでしょうか。これについては、これまでに数多の専門家や専門メディアがさまざまに分析し論じていますので、詳細はそちらに任せるとして、コメントのなかでは「ペロン政権でのバラマキによる放漫財政と、極端な保護貿易により、国の経済が金持ちのボンクラ息子みたいになってしまった」「教育の無償化をした結果、教育の質が落ちていき、経済的にも大変なことになった」といった見解が見られたことを挙げておきます。

 一方で、「アルゼンチンは農業がしっかりしてるから経済ガタガタでも国民が生活できるけど、さて日本は」という指摘も見られました。我々も油断していると、いつしか「もはや経済大国だった面影はありません」などと書かれてしまうかもしれません。

 ちなみに、アルゼンチンが現在も世界トップクラスの実力を誇るサッカーについて、「サッカーが南米で1、2位を争うぐらいに強いのはその(経済大国だった)名残り」「経済状態が悪い時ほどサッカーが強くなる傾向にある」といった投稿もありました。同国を代表するプレイヤー、リオネル・メッシ選手は、父方の祖先がいわゆるイタリア移民だそうです。『母をたずねて三千里』にも、マルコを助けてくれたイタリア移民たちの姿が描かれていました。彼らの子孫がやがてサッカーで世界一になると考えると、なんだか感慨深いものがありますね。

『母をたずねて三千里』HDリマスター版は、制作した日本アニメーション社の創業50周年を記念し、CSファミリー劇場にて2025年6月1日より毎週日曜6時に放送中です。

(マグミクス編集部)

【画像】「名前なんだっけ?」マルコと旅した白いアイツ…ドーナツにも(3枚)

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