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『ガンダム』リアルさに欠ける? MSの開発速度 現実の戦闘機は10年かかってんぞ

『機動戦士ガンダム』で描かれた一年戦争では、多数のモビルスーツが次々と開発、投入されました。現実の戦闘機開発は10年以上が当たり前、宇宙世紀の兵器開発はなぜこれほど高速なのでしょうか。

マジはやい どうなってんだ宇宙世紀?

ザクはもちろん、グフも派生機やバリエーション機がわずかな期間に登場している。「MG 1/100 MS-07B グフ Ver.2.0」(BANDAI SPIRITS) (C)創通・サンライズ
ザクはもちろん、グフも派生機やバリエーション機がわずかな期間に登場している。「MG 1/100 MS-07B グフ Ver.2.0」(BANDAI SPIRITS) (C)創通・サンライズ

 アニメ『機動戦士ガンダム』に描かれる「一年戦争」は、その名称のとおり、わずか1年のあいだに勃発し終結した戦争でした。

 この戦争は、兵器技術史的な観点から見ても極めて異様な「技術進化の加速度」をともなった戦争として特異な輝きを放っています。なかでもモビルスーツ(MS)の開発と実戦配備の進度は、現実の軍事技術開発の常識に照らせば、明確に「異常」と形容せざるを得ないものがあります。

 上述した一年戦争は宇宙世紀0079年1月に開戦し、翌0080年1月1日に終結しました。このわずか1年のあいだに、ジオン公国軍は「ザク」に始まり、「グフ」「ドム」「リック・ドム」、そして「ゲルググ」といったMSを次々と前線に投入、加えて、巨大モビルアーマー群も戦場に姿を現しました。一方、地球連邦軍もまた「ガンダム」を基にした量産機「ジム」の実用化に成功し、短期間での派生型開発と即応的な戦線展開を実現しています。

 このような兵器開発と戦場投入の加速度は、アニメ作品の構造上や後付け設定の都合ではあるでしょうが、その技術的進化の「異常さ」は、現実の軍用機開発史と比較することで、より一層際立って見えてきます。

 たとえばF-35「ライトニングII」はアメリカ主導の多国間、統合打撃戦闘機(JSF)計画のもと、1990年代より構想が始まり、試作機X-35の初飛行は2000年です。本格的なプロトタイプであるF-35の初飛行が2006年、そして初期作戦能力(IOC)の獲得が2015年と、実戦部隊への配備までに少なくとも10年もの歳月を要しました。また、ロシアの第5世代戦闘機Su-57に至っては、2010年の初飛行以降、十数年を経てもなお安定的な量産体制の構築には至っていません。

 このように現代の戦闘機開発は10年が最低ラインであり長期化しています。これは複雑きわまる電子装備、ソフトウェア、センサー、兵装管制システムなどの「統合」にかかる困難性に理由があります。

 最新鋭戦闘機は、ステルス性、空戦機動力、情報処理能力、さらには電子戦能力までを1機に包含する「総合戦闘プラットフォーム」でなければならず、その内部では多数のシステムが緊密に連動します。ゆえに、たとえ一部の不具合であっても、機体全体の運用が致命的に制限される可能性があるため、慎重に開発がすすめられます。F-35開発においても、初期の段階ではソフトウェアの不具合修正やアップデートに巨額の予算と膨大な時間が費やされていました。

 こうした現実と比較すれば、『ガンダム』世界におけるMS開発には、「統合の壁」が存在していないように見えるほど高速です。では、なぜ宇宙世紀の兵器開発は、これほどまでに高速で成功裏に進行し得たのでしょうか。

 その仮説のひとつとして挙げられそうなのが、宇宙世紀における人工知能(AI)技術の高度な発展です。作中におけるや、アムロの戦闘データをフィードバックする自動学習機構(劇中では「学習型コンピュータ」と呼称)など、AI技術の一端を示唆する描写が存在しており、MS開発における設計・統合・適応の多くの工程が、極めて高性能なAIによって自動化されていたとすれば、実戦投入までのスピードが劇的に短縮されたとしても説明が可能であるといえるでしょう。

 一年戦争は、フィクションであるがゆえに許された技術的飛躍の宝庫です。その中に潜む「現実との落差」を比較することで、宇宙世紀時代の社会の一端を垣間見る手がかりとし、作品をより楽しむ新たな視点となるかもしれません。

(関賢太郎)

【画像】あなたホントにグフ? こちらがどう見ても「アレ」なグフです(3枚)

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関賢太郎

1981年生まれ。航空軍事記者、写真家。航空専門誌などにて活躍中であると同時に世界の航空事情を取材し、自身のウェブサイト「MASDF」(http://www.masdf.com/)でその成果を発表している。著書に『JASDF F-2』など10冊以上。

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